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石巻焼きそば「B−1」参戦 ヘラは行方不明の妻愛用

2011年5月20日19時37分

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写真:妻きみ子さんと一緒に愛用していたヘラを手にする尾形勝寿さん=仙台市内、小野写す拡大妻きみ子さんと一緒に愛用していたヘラを手にする尾形勝寿さん=仙台市内、小野写す

写真:麺を2度蒸して茶色にしたあと、だし汁を使って焼いた「石巻焼きそば」=石巻茶色い焼きそばアカデミー提供拡大麺を2度蒸して茶色にしたあと、だし汁を使って焼いた「石巻焼きそば」=石巻茶色い焼きそばアカデミー提供

 兵庫県姫路市で21、22両日に開かれるB級グルメの祭典「B―1グランプリ」の近畿・中国・四国支部大会に、津波で被災した宮城県石巻市の名物「石巻焼きそば」が特別招待される。調理担当の尾形勝寿(かつじゅ)さん(66)は、津波で行方不明となっている妻きみ子さん(59)と一緒に愛用してきたヘラを手に、大会に臨む。

 尾形さん夫妻は約40年間、石巻市の海岸近くでラーメン店を経営していた。中でも、サバなどでとっただし汁をかける石巻焼きそばが人気メニューだった。

 3月11日、営業中に激しい揺れが襲った。尾形さんは客を帰し、「山さ逃げっぺ」ときみ子さんに声をかけた。通帳や懐中電灯をカバンに詰め、店を出た。

 その直後だった。「お父さん、見ろー」。後ろを歩くきみ子さんの方を向く間もなく、すさまじい水圧が背中を突いた。流れてきた木材をつかんで水面に顔を出したが、妻の姿はもうなかった。自分も肋骨(ろっこつ)が3本折れる重傷を負った。

 2階建ての店舗兼住宅は津波後の火災で全焼した。3月末、店の調理室を片付けていると、がれきから焼きそば用のヘラが二つ見つかった。ほかの調理用具は真っ黒だったのに、焦げてもいなかった。次女の洋子さん(34)が言った。

 「お母さんが、また焼きそば作れって言ってるんじゃない?」

 そんな時、石巻焼きそばで街おこしを目指す仲間から「B―1」の誘いがあった。きみ子さんは昨年9月に神奈川県厚木市であった「B―1」に参加。店番をした尾形さんは「来年は一緒にね」と誘われていた。

 店を再建する気力はもうないというが、石巻のため、妻との約束を果たすため、愛用のヘラを携えて参加する決意をした。

 「石巻を全国にPRして遊びに来てもらい、街に元気の芽を出すっぺちゃ」。石巻市に戻った後は、津波で傷めた肩の手術が待つ。(小野大輔)

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