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川で洗濯・トイレは仮設・入浴週2回… 水なき南三陸

2011年6月2日1時37分

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写真:津波で流された衣類などを川で洗う三浦しげみさん(76)。仮設住宅の水は塩分が多く、生活用水としては使えないという=5月25日、宮城県南三陸町、中里友紀撮影拡大津波で流された衣類などを川で洗う三浦しげみさん(76)。仮設住宅の水は塩分が多く、生活用水としては使えないという=5月25日、宮城県南三陸町、中里友紀撮影

 津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、震災から3カ月近くたった今も水道が使えない。復旧率はわずか1%。頼みの隣接市も水不足に陥っており、水のない生活に住民は疲弊しきっている。

 町内の山あいを流れる新井田川の上流では昼間、女性たちが集まって洗濯物や食器を洗っている。ある主婦(46)は、洗濯物で膨れ上がったスーパーのポリ袋四つを胸に抱え、1日おきに川へと通う。

 「お父ちゃんも息子も建築関係だから、汚れた服を何日も避難所の狭いスペースに置いておけない。大変だけれど、水が出るまでここで洗うよ」

 宮城県によると、県内被災地の水道の復旧率は1日現在で94%。これに対し、南三陸町は1.24%で、被災地の自治体の中でも極端に低い。

 震災前、町では6カ所の浄水場で井戸水をくみ上げ、町内約5700戸に送水していたが、津波で1カ所が壊滅。2カ所は無事だったが、3カ所ではくみ上げる水の塩分濃度が高くなり、飲料水として使用できなくなった。

 町は最近になってようやく新しい水源を確保し、仮設の導水管を敷設し始めた。しかし、町内では水道管を渡すための主要な橋が津波で落下しており、復旧の見通しについては「各家庭へとつながる水道管もズタズタに壊されているため、相当の時間がかかる」(町担当者)という。佐藤仁町長も「現段階では、復旧時期を示すのは難しい」と話す。

 避難所となっている体育館や宿泊施設でも、水のない生活を強いられている。約600人が避難生活を送っている「南三陸ホテル観洋」は1日約300トンの水が必要だが、給水車で運び込めるのは約80トンだけ。入浴は週2回。トイレは屋外の仮設トイレを使用し、洗濯物は川の水を使うか、石巻市などのコインランドリーで洗う。

 おかみの阿部憲子さんは「これからどんどん暑くなるなかで、週2回の風呂や仮設トイレで、どこまで衛生状態が保てるか。被災した方々を受け入れているが、水がなければどうにもならない」と嘆く。

 町内の水は、隣接する同県登米市から、1日延べ80〜100台の給水車を使って、250〜300トンを運び入れている。

 このため、登米市内での4月の取水量は前年同月比で約10万トン、約12%増加した。南三陸町内から登米市内に移り住む被災者が増えていることや、今後、市内に同町の仮設住宅が200戸建設されることなどから、「これ以上水が必要になれば、市民に節水を求めざるを得ない状況」(市担当者)となっている。

 登米市の布施孝尚市長は「こちらもできるだけ協力したいが、水は有限であり、国などからのサポートがない状況では限界がある」と話している。

■知らず知らずにトイレ我慢

 朝日新聞は5月10日から南三陸町に駐在記者を置いた。「南三陸ホテル観洋」内の水の出ない部屋で寝泊まりを続けながら、この原稿を書いている。海を見下ろす高台に立つ同ホテルは津波で1、2階が浸水したが、上階は被害を免れた。被災者のほか、復興工事の関係者やNPO団体なども拠点を設けている。

 水が出ないことで、最も不便を感じるのは排泄(はいせつ)だ。屋外の仮設トイレを使うため、無意識のうちに我慢するようになり、水分の補給すらためらいがちになる。

 夜中に何度も屋外の仮設トイレに通う高齢者の姿を見る。川での洗濯も雨が降ると水が濁ってできない。多くの被災者が車を失っているため、洗濯を20キロ離れたコインランドリーに運べるのは、親族や知人が訪れる週末だけの人が多い。

 一日も早い水道の復旧が、町民の切実な願いだ。(三浦英之)

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