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「アートセラピー」かえって心の傷深くなる場合も

2011年6月10日7時37分

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 心のケアのため、被災地の子どもに絵を描いてもらう「アートセラピー」について、日本心理臨床学会が9日、注意を呼びかける指針をまとめた。心の不安を絵で表現することは、必ずしも心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防にはつながらず、かえって傷を深くする場合もあるという。

 被災地では、自由に絵を描いてもらうことが心の回復につながると、個人やNPO団体などが次々に入り、活動している。大手企業が主催する例もある。

 臨床心理士ら約2万3千人が所属する同学会が9日にまとめた「『心のケア』による二次被害防止ガイドライン」では「絵を描くことは、子ども自身が気づいていなかった怒りや悲しみが吹き出ることがある」と指摘。特に水彩絵の具のように、色が混ざってイメージしない色が出る画材を使う際には、意図せず、強い怒りや不安が出てしまう心配があるため、注意が必要とした。

 臨床心理士の静岡大の小林朋子准教授は4月下旬、岩手県内の避難所で小学生が水彩画を描く場面に出くわした。ある児童は、画用紙の上で色が混ざり黒っぽくなった絵を見て、動けなくなっていたという。「絵の具が溶かれた水や、作品の黒っぽい色が、津波の濁流のイメージにつながった可能性がある」と話す。

 神戸大精神科の田中究准教授によると、子どもが心を表現するのは自然で、自発的に絵を描くのは構わないという。ただ集団の場では、絵を描くことを断れない子も出てくる。阪神大震災後のアートセラピーにも注意を促したと言い「心を表現した子を長期間ケアできねば治療にはならない」と指摘する。

 指針では、心の表現を促す活動は、専門家とともに行い、心のケアなど継続的にかかわることができる状況でのみ実施するよう求めた。

 PTSDに詳しい国立精神・神経医療研究センターの金吉晴・成人精神保健研究部長は「安心感のない場で心の傷を無防備に出すことは野外で外科手術をするようなもの。描いた絵の展示も控えるべきだ」と話している。(岡崎明子)

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