イスラエル軍は29日夜、パレスチナ自治区ガザ北部のベイトハヌーンから撤退した。30日朝にもパレスチナの治安部隊が展開し、過激派対策などの責任が自治政府に引き渡される。軍はガザへの侵攻も停止し、軍検問所を撤去する。ハマスなどパレスチナの各過激派も29日、武装闘争の一時停止を発表。限定的ながら、中東和平のロードマップ(行程表)に定められた双方の暴力停止が初めて実施段階に入った。
撤退は午後9時(日本時間30日午前3時)ごろから始まり、約2時間で完了した。軍の戦車や装甲車、パレスチナ人の住宅破壊などに使われてきた軍用ブルドーザーが列をなして次々とイスラエル側に出た。ベイトハヌーンは過激派がイスラエルにロケット弾攻撃を仕掛ける拠点とされ、軍は5月中旬に侵攻して街を制圧していた。
軍は「過激派の移動を防ぐ」として自治区内の主要道路に検問所を設置しており、これがすべて撤去されれば、住民は移動の自由を取り戻す。過激派の殺害作戦を停止することも合意に盛り込まれている模様で、軍の作戦に日々脅かされていた住民の生活は大幅に改善されるとみられる。ただ、軍は自治区内にあるユダヤ人入植地の周辺には警備目的で引き続き駐留するため、自治区から完全に兵士の姿が消えるわけではない。軍は西岸自治区ベツレヘムからも撤退する方向で自治政府との協議を進めている。
同軍筋によると、撤退の段取りを決める治安協議の場で、自治政府の治安当局高官はテロの抑止や過激派活動家の逮捕など法的手段を取ることを約束したという。イスラエルのメディアによると、自治政府の治安当局はすでに、イスラエルへの攻撃を準備していた数人の容疑者を拘束したという。
(06/30 10:24)
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