イスラエル政府は、ヨルダン川西岸パレスチナ地区に建設済みの分離壁を一部撤去する方針を固めた。複数のイスラエルメディアが20日、政府治安筋の情報として報じた。23日に国際司法裁判所(ICJ)で分離壁の違法性をめぐる審理が始まるのを前に、「壁は恒久的なものではない」とするイスラエルの政府主張を強調する狙いのようだ。
イスラエル紙ハアレツによると、対象は西岸地区北西部のバカ・アルシャルキエ村周辺。村を完全に取り囲む形で分離壁が走っており、このうち東側の8キロを22日から撤去するという。チャンネル10テレビは、撤去費用を約800万ドル(約8億5000万円)と伝えている。建設済みの壁が撤去されれば、初めてのケースになる。
国連総会は昨年12月、パレスチナやアラブ諸国の要請に基づいてICJに分離壁の法的判断を求めた。イスラエルは分離壁は自衛権の行使であり、ICJに法的判断を下す権限はないとして口頭弁論にも不参加を決め、違法判断が出ても黙殺する構えだ。併せて、「壁は撤去可能で、将来のイスラエルとパレスチナの国境になるわけでもない」と主張している。
しかし、実際に無視するのは難しいとの見方もあり、ICJに問題が持ち込まれたことはイスラエルの政治判断に様々な影響を与えている。2月に入ってシャロン首相は分離壁の一部ルートの短縮や変更を検討し始めたと伝えられている。
(02/21 12:26)
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