イスラム過激派ハマスの創設者で精神的指導者のアハメド・ヤシン師(68)が22日、ガザ市内でイスラエル軍の攻撃を受けて死亡した事件を受けて、抗議デモがパレスチナ全土に広がった。イスラエル軍との衝突も各地で起き、取材中のジャーナリストら少なくともパレスチナ人2人が死亡した。中東和平プロセスの仲介役を務めてきた国連、米、ロシア、欧州連合(EU)の4者協議は同日夜(日本時間23日未明)、カイロで緊急会合を開いて国際社会としての対応を協議した。
周辺国をはじめ国際社会には、ヤシン師殺害によって中東情勢が流動化するとの懸念が広がっている。アナン国連事務総長は22日、「国際法に反する」と強く非難。EUも声明を発表し、批判した。ハマスは攻撃後、報復を宣言した。パレスチナ人の対イスラエル感情が極度に悪化するのは確実で、長い停滞期を迎えている和平プロセスの先行きは一層不透明になった。
イスラエル軍は、22日朝の声明でヤシン師を狙った殺害作戦だったことを公式に認めた。シャロン首相は同日午後、与党リクードの議員総会でヤシン師を「テロリストの筆頭」と形容し、「作戦を成功させた治安機関に感謝する」と述べた。
一方、殺害に抗議するパレスチナ人のデモは、ガザ自治区のほか、ヨルダン川西岸各地に広がった。
パレスチナ放送などによると、ガザ自治区南部のハンユニスでは、ユダヤ人入植地そばでデモに参加していた13歳の少年がイスラエル兵に撃たれ、死亡。西岸のナブルス自治区近郊では、地元ラジオ局のジャーナリストが取材中に軍の発砲を受け、死亡した。同放送は、ベツレヘムやヘブロンなど他のパレスチナ自治区でも衝突が起き、計数十人の負傷者が出たと伝えている。
イスラエル中部のテルアビブ郊外では、パレスチナ人の男がおのを振り回し、3人のイスラエル人が負傷した。イスラエル放送によると、男は警察に「報復しようと思った」と供述したという。
レバノン国境では22日、イスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル軍の拠点を攻撃。イスラエル軍も報復としてレバノン側を空爆した。
報復テロを警戒し、イスラエル軍は同日朝、ガザとヨルダン川西岸の両パレスチナ地区とイスラエルを結ぶ検問所をすべて閉鎖し、パレスチナを全面封鎖した。
(03/23 01:54)
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