サウジアラビアの工業都市ヤンブーで1日に起きた乱射事件は、同国経済の屋台骨である石油関連施設で働く外国人が標的となった。先月21日の内務省施設への自爆テロに続き、これで権力と経済双方の中枢がテロの標的になったことを示し、世界最大の産油国が受けた衝撃は大きい。
ヤンブーは紅海と地中海を結ぶエジプトのスエズ運河に近いことから石油関連の拠点都市として整備され、港は日量300万バレル以上の石油製品の輸出が可能。現在も拡張工事が進められ、外国企業の進出も続いている。今回の事件は、米国人らを狙うことで外国企業に恐怖感を与えて投資を妨げ、サウジ経済に打撃を与える目的があったとみられる。
事件現場となった地区はサウジ治安当局がテロ対策として厳重な立ち入り制限をし、出入りには許可証が必要。だが、武装グループの4人はここで働いたことがあるため許可証を持っていたといい、同国経済の中枢施設にテロ組織が容易に近づけることを見せつけた。
同国の実権を握るアブドラ皇太子は事件直後、テロ組織に対して「制裁を下す」と言明、徹底的な取り締まりを継続する姿勢を強調した。一方で「必要なら20年でも30年でも無法者たちを追うことになろう」と述べ、過激派対策の難しさを吐露した。
サウジ紙アルジャジーラは、過激なファトワ(宗教見解)を出してテロを扇動するイスラム教指導者や、それを支持する者たちが国内でテロを助長していると指摘した。
サウジ王制の腐敗や民衆への抑圧体制を批判し、イスラム教の二大聖地を抱えるサウジから異教徒である外国人の追放を訴えてテロを正当化するオサマ・ビンラディン氏などイスラム過激派の主張は、今も若者たちを中心に一定の影響力があるとされる。
昨年5月と11月に首都リヤドで起きた外国人居住区での自爆テロ以降、サウジ政府は過激派組織に対する大がかりな掃討作戦を展開、これまでに数百人を逮捕、拘束した。それでもやまないテロの現実は、力ずくの対決姿勢では一掃できない「社会の闇」を改めて見せつけたといえる。
(05/03 18:41)
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