ブッシュ米大統領は11日、テロ支援を続けているとして、シリアに対し、米国からの輸出禁止措置などを柱とする「シリア制裁法」を発動した。イラク人虐待事件で米国への信頼感が問われるなか、イスラエルと敵対するシリアへの強硬措置に踏みきったことで中東諸国から反発が強まることは確実だ。
ホワイトハウスによると、制裁内容は、医薬品や食料を除き、米国からシリアへの輸出を禁止▽シリアが所有、運航する航空機の米国内での離着陸禁止▽テロ支援にかかわった個人、組織の資産凍結――など。
米国からシリアへの輸出額は03年で2億1400万ドル(220億円)。シリア国内で活動する欧州や日本などの外国企業に対する制裁措置は盛り込まれていない。資産凍結の対象者は今のところいない。
イスラエル占領下のゴラン高原返還を求めるシリアは、ハマスなどパレスチナ過激派各派を「占領への抵抗」として支援し、国内での政治活動を容認してきた。米政府は、テロ支援に当たるとしてシリアに拠点事務所の閉鎖などを求めていた。
国務省高官は11日、「シリアはこうした活動を停止させる措置をとらなかった」と批判。「生物、化学兵器開発を続けている」との懸念も表明した。また、イラクへの過激派流入を放置していることが「イラク安定化や復興への妨害」に当たると説明した。
制裁法は、イスラエル寄りのロビー団体などの圧力で昨年11月に可決され、制裁の適用権限を大統領に委ねていた。発動は秋の大統領選を前にした選挙対策の側面が強い。
(05/12 10:36)
|