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氷河50メートルは遠のいた(国際観測村の島から1)

2006年07月24日

 切り立った青白い氷の壁が、どこまでも続く。高さは15メートルほどか。そこいら中から、太い滝が海に落ちている。あぶくと戯れるように、海鳥が氷の縁で舞う。

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諸島最大、北東島の東氷床の末端では、至る所で滝のように水が落ちていた=北東島のブロースベル氷河で

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スバールバル諸島

 スバールバル諸島の北東島には、諸島最大の氷床がある。南端で幅約30キロ、長さ約20キロの氷が氷河となって海に突き出ている。だだっ広い氷の平原では、表面がとけて水となり、氷床に川をうがち、先端からあふれる。落ちる水量は例年より多いという。

 7月初旬、短い夏に入っていた。例年と少し違うという景色は、隣のスピッツベルゲン島にある国際観測村のニーオルスンでも目にした。

 7年前からほぼ毎年、植生研究のために来ている国立極地研究所の内田雅己さん(37)は、地面の上の小さなキョクチヤナギを指さした。「普通は双葉が多いが、三つ葉が目立つ。もう紅葉しているのもある」。日本の観測基地から見える氷河の先端も年々、後退していく。「50メートルは遠のきました」と内田さん。

 スピッツベルゲン島の西岸は、他の主要な3島より暖かい。大西洋から温暖な気候をもたらすメキシコ湾流の一部が、西岸沖を北上しているからだ。それにしても、春に早々と海氷が消えた今年は、暖かすぎるという。

 野生生物の研究で、25年前から毎年のようにニーオルスンに通うノルウェー極地研究所のゲイル・ビング・ゲイブリルセンさん(51)は「観測村の前にあるフィヨルドが、冬は海氷で埋め尽くされるのに、この冬は凍らなかった。初めてのことだ」と驚く。

 研究者は「本当に温暖化なのか、年による変動の範囲内なのか、まだ分からない」と慎重だ。ただ、変化の兆しは確かに感じている。

    ◇     

 日本など各国の観測基地があるスバールバル諸島から、地球環境の変動を見つめる。

 ◆キーワード

〈スバールバル諸島〉 北極圏のバレンツ海とグリーンランド海の間にある群島。スピッツベルゲン島を中心に、北東島、バレンツ島、エッジ島などからなり、全体の面積は約6万1000平方キロ。九州と四国を足した面積より少し広い。冬は島の大半が海氷で取り囲まれる。ノルウェーの主権が認められているが、第1次世界大戦後に結ばれたスバールバル条約で統治される特殊な地域。条約締約国の国民はノルウェー国民と同じ権利を持つ。日本など9カ国が14の観測基地を置き、世界にもまれな国際観測村がある。

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