北朝鮮による拉致被害者の家族ら5人が22日午後(日本時間同日夜)、ジュネーブの国連欧州本部で開かれた国連人権委員会強制的失踪(しっそう)作業部会のヒアリングに出席し、「生きているうちに会いたい」と被害者の帰還を待つ心情を訴えた。
田口八重子さん(失跡当時22)の兄飯塚繁雄さん(64)は「北朝鮮は私たちの疑問点・矛盾点に回答をよこさず、帰国した5人が家族を日本に呼び寄せたいという要求も拒絶している。解決には、当作業部会の力添えが必要」と説明し、「妹に、私も一目会いたい」と結んだ。
増元るみ子さん(同24)の姉平野フミ子さん(53)は昨年10月、79歳で亡くなった父正一さんの遺影を手に「妹を母にだけは会わせてやりたい」。有本恵子さん(同23)の母嘉代子さん(77)は「私も夫も残された時間は多くない。一目、娘に会いたい」と訴えた。
横田めぐみさん(同13)の母早紀江さん(67)は「生きていると確信している。まだ長い人生を自由の地で過ごさせてやりたい」と述べた。最後に横田さんの弟の拓也さん(34)が「『死亡』と伝えられた8人の被害者が生きている可能性は高いと私たちは考えている。委員の皆様の力添えが、愛する家族にもう一度自由を与えるために重要です」と結んだ。
訴えを聞いた作業部会の5人の委員のうち、議長のガルシア・サヤン氏(ペルー出身)は「有意義だった。我々は裁判所ではないが、関係国政府に協力を求めたい。今回の人たちの所在が確認できるまで、引き続き作業を続ける」と語った。
陳述に先立つ同日午前(日本時間同日夕)、家族はデメロ国連人権高等弁務官と約1時間、面談した。同氏は家族が持参した被害者の写真を見つめ、「もしも私の息子が同じ目に遭ったら、どんなにつらいことだろう」と話し、「役職を超えて拉致問題の解決に協力したい」と述べた。救出運動のシンボルの青リボンを受け取って胸に付け、「青は国連の色。私たちが一体だと示す色でもある」と話した。
◇
22日午前(日本時間同日夕)、拉致問題に関する日本政府の「追加回答書」が国連人権委員会に提出された。政府は一度回答書を提出したが、家族会が「素っ気なくおざなりだ」と反発し、追加回答書を提出するよう求めていた。
(04/23 00:27)
|