小泉首相は31日、中国の胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席とロシアのサンクトペテルブルク市内のホテルで約45分間、初めて会談した。北朝鮮の核開発問題について、両首脳は平和的、外交的に解決することで一致。胡主席は米朝中3者協議への日韓両国の参加について「十分に理解する」と語った。拉致問題についても「対話を通じた解決を支持する」と初めて表明した。北朝鮮に対する「圧力」を打ち出した先の日米首脳会談とは対照的に、「対話」を前面に掲げる形となった。
胡氏が3月に国家主席に就任後、首相との会談は初めて。小泉首相の靖国神社参拝をきっかけに両国の首脳会談は昨年10月以来、途絶えていた。この日の会談で両首脳とも「未来志向の関係」を強調。胡主席は靖国問題に直接触れなかったが、「新世紀の両国関係を深めるため歴史と教訓から学ぶべきだ。相手の国民感情を傷つけてはならない」と語った。
対北朝鮮政策をめぐっては、23日の日米首脳会談では北朝鮮が挑発的な行動を続けた場合、「より強硬な措置をとる」ことで一致。一方で、北朝鮮と歴史的に関係の深い中国との間では「圧力」の要素が消え、「対話」が前面に出た。「対話」の中国、「圧力」の米、その間をつなぐ日本という「北朝鮮包囲網」の中での重点の置き方が明確になった形だ。
日本側の説明では、北朝鮮問題について、小泉首相は「イラク問題とは違う。平和的に解決すべきだ。ブッシュ大統領も平和的解決に自信をもっている」と強調。米朝中の3者協議に日韓両国の参加が不可欠と指摘し、「核開発は北朝鮮にとって何もプラスにならない。日中韓、場合によってはロシアも含めて、やめさせなければならない」と語った。
胡主席は朝鮮半島の非核化、対話による平和的解決との方針を改めて説明。米朝中3者協議について「当面の課題は会議を継続させていくこと。会議の形式はオープンがいい。日本の希望は十分に理解する」と応じた。拉致問題については「日本が対話を通じ、適切に解決されることを支持する」と表明した。
また、首脳レベルの相互訪問について「実現に向け互いに努力する」ことを確認した。
中国が検討を進める北京−上海間の高速鉄道建設計画については、首相は「日本の産業界が強い関心を持っている。日中協力の大きな可能性が広がる」と述べ、日本の新幹線採用を求めた。胡主席は「リニア方式かレール方式かを議論している最中だ。結論が出たら、日本との協力を検討したい」と応じた。
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サンクトペテルブルクでの一連の主要行事は、1日の米ロ首脳会談で幕を閉じる。首脳外交の舞台は、同日から3日までの仏エビアン・サミット(主要国首脳会議)に移る。
サミットではロシアが経済問題に関する討議を含め、初めて全日程に参加する。名実ともにG8(主要8カ国)による首脳会議となる。また、初日の新興国・途上国とG8の対話に中国の胡主席が出席。主席就任以来、初の本格的な「外交デビュー」の場ともなる。
一方、ブッシュ米大統領は2日午後、中東訪問のためサミットを中座する。イラク戦争をめぐって亀裂が入った米国と議長国・フランスとの間の「関係修復」に微妙な波紋を起こしそうだ。
(05/31 20:01)
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