エビアン・サミット(主要国首脳会議)は3日午前(日本時間同日夕)、シラク仏大統領が「議長総括」文書を発表し、閉幕した。北朝鮮について「核問題と拉致など未解決の人道的問題の包括的な解決を、平和的手段で追求する努力を支持する」と明記。拉致問題の解決をサミットの文書に初めて盛った。イラク復興の具体的取り組みは触れられなかったが、世界経済の回復については楽観的な見通しを示し、「共通の責任として成長を高める」と、G8の協調姿勢をアピールした。
北朝鮮問題については、日本の働きかけによって、韓国の「平和繁栄政策」についても「支持する」との表現が入り、全体として平和的手段による解決を強調する内容となった。
拉致問題については、2日の昼食会合で小泉首相が指摘した。他の首脳から関連の発言はなかったが、同日夜の自由討議で首相が改めて説明。各国首脳が関心をもって発言したという。首相が前回のサミットで初めて言及した際には議長総括に入らなかっただけに、今回は「多国間や2国間での根回しが奏功した」(日本外務省幹部)という。
当初は焦点とみられていたイラクの復興問題については突っ込んだ論議が避けられ、議長総括では「共有する目標は、近隣国と平和状態にあり、安定し民主的なイラクだ」と、抽象的な表現にとどめている。中東和平については、米主導の新たな中東和平構想ロードマップ(行程表)の「承認を歓迎し、共同で支援する」と述べるなど、G8の協調ぶりを確認した。
一方、経済分野ではイラク戦争の短期終結を踏まえ、「下方リスクは後退し、回復のための条件は整っている。成長の潜在能力に自信を持っている」と表明。健全なマクロ経済政策や構造改革の実施、世界貿易機関(WTO)の貿易自由化交渉(新ラウンド)の期限内妥結に向けた努力を確認した。経済討議で扱われた為替問題は「サミットの本質的役割は中長期的な取り組み」(首相同行筋)との理由から盛り込まれなかった。
閉幕後の記者会見で、シラク大統領は「今回のサミットは(成長に向けた)信頼を与えるサミットだった」と総括した。
小泉首相は日本時間4日早朝、スイスのジュネーブ国際空港から政府専用機に乗り、4日夕に帰国する。
(06/03 22:07)
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