北朝鮮に残した子どもとの再会がかなわぬまま2度目の年越しを迎えようとしている拉致被害者の蓮池薫さん(46)、祐木子さん(47)、地村保志さん(48)、富貴恵さん(48)の両夫妻が、25日午後、それぞれ記者会見した。「政府は他人事のように思っているんじゃないか」など、事態が進まないことへのいら立ちが、言葉ににじみ出た。
蓮池さん夫妻は新潟県柏崎市役所で記者会見した。平沢勝栄衆院議員らと会談した北朝鮮政府高官が、「被害者が平壌に迎えに来れば家族をかえしてもいい」と語ったとされることについて、薫さんは「(平壌で)会って、子供たちが帰らないなどと言ったらかえって永遠の離別になりかねない。成り行きを見守りたい」と慎重に語った。
夫妻には長女と長男がいる。薫さんは2人が「両親は日本に抑留されている」と伝えられていることを取り上げ、「北朝鮮当局が『お父さんたちを助けるため(日本に帰らないと)言わなければならない』と伝える可能性がないとも言い切れない。結局は永遠に一緒になれないという結果もありうる」と話した。
子供たちの帰国問題について、祐木子さんは「1年以上、何一つ解決できずに過ぎた。政府が他人事のように思っているんじゃないかなという気がしてしょうがない」と話した。
薫さんは「情勢に一喜一憂しないと思っていたが、動きが見えるような時には期待したこともあった」とこの1年を振り返った。帰国について肯定的な記事が韓国の新聞に掲載された時や、子供たちが北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号に乗って帰ってくるといったうわさを聞き、「冷静になろうと思ったが『事実だったら』とも思った」と話した。
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北朝鮮による拉致被害者で福井県小浜市の地村保志さん(48)、富貴恵さん(48)夫妻は25日、小浜市役所で今年を振り返る記者会見をし、保志さんは「正月を子どもたちと過ごせないのが2年目になる。子どもたちは3人だけで新年を迎えることになり、心配。正直言って考えたくない」と、子どもたちの帰国に進展がない現状にいらだちを見せた。
会見は、小浜市嘱託職員の保志さんが勤務を終えた同日夕開かれた。
保志さんは、拉致議連事務局長の平沢勝栄衆院議員と一緒に北京を訪れた関係者と中山恭子・内閣官房参与から24日に電話があったことを明らかにし、「私たちが平壌に行けば子どもを帰すという約束はなかったと聞いている。事実であれば、(子どもが帰る)確かな条件を整えた上で日本政府と相談すべき問題と思う」と話し、現状では訪朝する意思のないことを示した。北朝鮮がこうした提案をしたことについては「何か変化が出てきているのでは」と話した。
富貴恵さんは、フセイン元大統領拘束や、リビア情勢に触れ「世界情勢は良くなっている。来年こそはと期待している」と話した。
また、拉致問題解決のためにどんな手段が必要かを問われ、保志さんは「日本政府も北朝鮮も互いの主張で水掛け論をしている。譲歩がないので進展がない」と両国間で交渉が進まないことに不満を表した。北朝鮮に対する経済制裁が与える影響について保志さんは「良い影響なのか、悪い影響なのかわからない」と話した。
(12/26 00:35)
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