政府は14日、小泉首相が22日に北朝鮮・平壌を日帰り訪問し、金正日(キム・ジョンイル)総書記と首脳会談を行うと発表した。北朝鮮に残る拉致被害者の家族の帰国・来日を実現させ、北朝鮮が「死亡した」などとした10人の安否の真相究明を進展させたうえで、日朝平壌宣言の前進をうたう共同文書を交わし、次回の国交正常化交渉の日程を確定させたい考えだ。しかし、政府・与党では訪朝に慎重論も強い。首相は参院選を前に、大きな賭けに出ることになる。
首相の訪朝は02年9月以来。準備にあたる先遣隊が18日に平壌入りする。
細田官房長官は14日の記者会見で「首相は、拉致問題を含む諸問題、核問題をはじめとする安全保障上の諸問題を包括的に解決したうえで、北東アジア地域の安定に資する形で日朝国交正常化を実現したいと考えている」と述べた。政府は、拉致被害者の家族が帰国・来日すれば人道支援を再開する構えだ。
首相は同日午後、公明党の神崎代表と会談。さらに政府・与党連絡会議を開き、「北朝鮮から今朝、返事がきた。1カ月前から調整してきて合意した。核、ミサイル、拉致被害者8人、行方不明者10人。全体について進展する可能性があると判断した」と語った。
首相は同日夜、記者団に「国交正常化交渉の停滞した状況を打開する必要がある。私が訪朝することで、何らかの進展がある可能性があると判断した」と説明した。
政府は拉致被害者5人の家族計8人の無条件の帰国を求めているが、脱走米兵である曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさんについて、ベーカー米駐日大使は13日、日本記者団との懇談で「米国の拘束下に置かれれば、通常の手続きにのっとって罪に問われるだろう」と述べた。ただ、政府は米国との間で政治決着を模索している。
また、家族の帰国・来日は首相の帰国後、別の便になる可能性もある。
北朝鮮が「死亡した」などとした10人の安否の真相究明について、政府はこれまで日朝合同の調査機関の設置を打診してきたが、自民党の安倍晋三幹事長は14日の政府・与党連絡会議で、首相に「お茶を濁す結果に終わる、と私は考える」と指摘した。日本が主体的に調査が可能な体制をどう整えるかも課題だ。
政府は14日、米韓中各国に首相の訪朝について連絡した。しかし、北京で開催中の6者協議作業部会では核問題を巡って北朝鮮と他国が厳しいやりとりをしている最中の訪朝決定は、6者協議の行方に微妙な影響を与える可能性もある。
(05/14 21:19)
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