政府は、22日に平壌で行われる小泉首相と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の首脳会談で、拉致被害者家族の帰国・来日や、北朝鮮が「死亡した」などとした10人の安否の真相究明に進展が得られれば、北朝鮮にコメ支援を行う方針を固めた。25万トンとする方向で北朝鮮側と最終調整している。首脳会談で首相が総書記の回答を確認したうえで表明する。実現すれば、日本政府の対北朝鮮コメ支援としては00年の50万トン以来の規模となる。
具体的には、国連人道問題調整事務所(OCHA)が近く北朝鮮の支援状況について中間報告書を出すのにあわせ、国連の要請に応える形で国際機関経由で実施することを検討している。
政府関係者によると、北朝鮮は既に被害者家族の帰国・来日には応じる姿勢を日本政府に伝えてきている。ただ家族8人のうち、曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさん(64)は、来日すると脱走兵として米国に訴追される恐れがあることから、他の家族と同時に来日が実現するか否かはなお調整中という。政府は8人全員の帰国・来日を求めており、米政府に恩赦など「特別な配慮」を働きかけている。
北朝鮮が「死亡」「入国の事実はない」としている10人については、首相が総書記に納得できる再調査と情報提供を強く求める方針。昨年12月に北京で北朝鮮高官と会談した自民党の平沢勝栄衆院議員によると、北朝鮮側は02年に提供した10人の安否情報について「事実でないことは認める。当時の関係者はいなくなって事実関係はよく分からないが、徹底的に調べる」と述べたという。政府は総書記が前向きの姿勢を示すことを期待している。
コメ支援をめぐっては「拉致問題解決に代償は与えない」という政府方針があり、政府・与党の一部に「北朝鮮と取引したと見られかねない」(外務省幹部)といった懸念もある。だが、拉致問題で進展があれば、人道支援を見合わせてきた環境が変わったとして、政府の自発的な判断による支援だと説明する。
自民党の安倍晋三幹事長は16日の民放テレビ番組で「首相の訪朝でいろんなことが解決されて、環境が変わってゆけばだ。かつては日本も人道援助をしていた。もちろん程度の問題はある」と述べ、人道援助を条件付きで容認する姿勢を示した。
北朝鮮へのコメ支援は95年、北朝鮮訪日団が与党幹部に公式に要請したのを受けて始まり、00年までに、計118万トンが実施された。支援の大半は国連の人道支援の呼びかけに応じて日本が国連に拠出し、国連が日本からコメを買い上げて北朝鮮に送る形で行われてきた。日朝関係の悪化を受け、00年以降は実施されていない。
(05/17 03:05)
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