米政府高官は14日、拉致被害者曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんが病気治療を理由に来日を予定していることについて、日米間で「ある種のコンセンサス(見解の一致)に至りつつある」と述べ、人道的な配慮から、身柄の引き渡しを当面求めない方向で調整していることを認めた。そのうえで「米政府としては、彼に対して持っている権利を主張し続けることが重要だ」と述べ、訴追免除や恩赦などの措置には応じられないとの姿勢を改めて示した。
ジェンキンスさんは在韓米軍に配属されていた65年に北朝鮮側に渡った脱走の容疑などがかけられている。米国防総省当局者は、米国との犯罪人引き渡し条約を持つ日本に同氏が入国することについて14日、「米政府の立場は変わらない。米国が法的に引き渡しを要求できる状況になれば要求するつもりだ」と述べ、公式には引き渡しを求める姿勢を崩していない。
米政府高官は「日本側からの説明で病状が深刻で緊急の治療を要すると承知している」と述べ、「引き渡しをすぐに要求するかどうかは病状や今後の状況次第だ」と語った。さらに「法律的、人道的な問題や日米関係も考慮する。日米間の重大な問題にはならないだろう」とも語った。脱走という重大な容疑に対する米政府の原則は堅持したうえで、両国が柔軟に対応することで「対処方法」を見いだせるとの楽観的な認識を示したものだ。
米政府高官は日本側との協議については「様々なレベル、チャンネルで進めている」と述べたが、一方で「日本側から具体的な要請はなく、公式にも非公式にも何らかの合意に達したわけではない」と述べ、日本側から恩赦や訴追免除などの要請はないと説明している。
(07/15 16:08)
|