曽我ひとみさん一家が18日帰国・来日した。一家が再会を果たした時には足取りも確かだったジェンキンスさんが、曽我さんに支えられ、弱々しい姿で日本の地を踏んだ。
9日、平壌の空港。ジェンキンスさんは、付き添いの男性に米国製たばこを勧め、談笑した。日本のテレビ局が配信した動画を見た曽我さんは「元気そう」と、安心したという。ジャカルタでも、滞在先のホテルに入る際など、「一家の長」の風格で、常に先頭を歩く姿が印象的だった。
しかし、同行の日本政府高官には「(曽我さんと)離ればなれの生活で何度も病気し、そのたびに入退院を繰り返した。体調は万全ではない」と明かしてもいた。
11日、日本大使公邸に招かれた際は、北朝鮮への忠誠を示す金日成バッジを外していた。飯村豊大使からたばこを勧められると「私もヘビースモーカー」と応じた。
その夜、ホテルに戻ったジェンキンスさんは、ぐったりとしていた。医務官がガーゼを取りかえたり消毒したりする手当てをするときなどに「痛い」「つらい」ともらしたという。
今年4月に北朝鮮で受けた腹部の手術跡が化膿(かのう)しており、後遺症の恐れがあった。医務官らと相談した中山恭子内閣官房参与は、11日夜の便で急きょ、日本に帰国。ジェンキンスさんの早期来日と日本での治療を首相に要請した。
13日早朝、一般患者の出入りが少ない時間帯、ジェンキンスさんはジャカルタ西郊の総合病院で検診を受けた。結果は翌日に知らされた。別の部位での病変も発見され、本人もショックを受けた様子だったという。このころから、歩く際につえを使うようになった。
「さよならを言いたい」。15日、ジェンキンスさんは北朝鮮からの同行者との面会を要望する。「最終決断だ」と日本政府関係者は思った。
そして、来日の前夜。メガワティ大統領を表敬訪問した際、ジェンキンスさんは言った。「妻の故郷で一家で暮らす方が、我が家は幸せなのです」
(07/19 09:00)
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