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クボタ旧工場南側に患者集中 中皮腫疫学調査

2006年04月12日11時34分

 兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺で住んだり、働いていたりして、アスベスト(石綿)によるとみられる中皮腫を発症した患者の多くが、風下にあたる工場の南側に分布していることが、奈良県立医科大の車谷典男教授らの疫学調査でわかった。風向きなどを考慮したシミュレーションによると、石綿は工場の南南西方向を中心に広範囲に飛散していたとみられ、患者の分布状況と一致。クボタの石綿と周辺住民の健康被害との因果関係を一層裏付ける結果となった。

地図

   

 調査は、患者や家族の相談を受けている「関西労働者安全センター」などの依頼で、車谷教授と大阪府立公衆衛生研究所の熊谷信二・生活衛生課長が患者や家族から直接聞き取りをした。今回、最終報告がまとまった。

 センターに相談があったうち、業務で石綿を扱ったことのない99人の中皮腫患者について調べたところ、いずれも工場で毒性の強い青石綿を使っていた時期(57〜75年)に少なくとも1年以上周辺に住んだり、勤務したりしていた。

 工場周辺に住んでいたために石綿を吸ったとみられる86人(うち72人死亡)のうち、約9割の77人の自宅が半径1500メートル以内に集中し、特に工場南側が多かった。工場周辺に勤務先があった13人(うち12人死亡)のうち6人は、JR線を挟んですぐ南側にあるヤンマー尼崎工場に勤務していた。73〜75年の工場近くの気象データを調べたところ、北北東の風を中心に北方向から吹く風が大半で、風下に患者が多いことと符合した。

 また、中皮腫での死亡の全国統計がある95年以降について、対象者の死亡率と全国平均を比較。特に半径300メートル以内では最大54.1倍(95〜99年の女性)と、工場に近いほど死亡率の高さが際立った。

 気象データをもとに工場を発生源としたとき石綿がどのように飛散したかも推計。飛散したと推定される石綿の濃度が高いほど、実際の中皮腫患者の死亡率も高く、関連が裏付けられた。

 飛散した石綿の繊維数の計算では、大気汚染防止法で定める工場敷地内の規制値(0.01f/ml=1リットルあたり10本)以上の濃度で石綿繊維が飛散した範囲が、南南西方向では4キロ以上離れた臨海部に到達。南東は神崎川を越えて大阪市西淀川区付近にまで広がった。この範囲内に住んでいた人は75年時点で約12万人になるという。

 最も推計数値が高かったのはヤンマーの工場で同規制値の300倍、日本産業衛生学会が石綿を取り扱う職場の目安として定める評価値(0.03f/ml)と比べても100倍に達した。

 車谷教授は「工場と周辺の中皮腫発症との因果関係がさらに裏付けられ、予想よりも広範囲に影響が及んでいたこともわかった。工場で石綿を使った期間、周辺に一定期間住んだり、働いたりした人のすべてにリスクがあるとも考えられる。潜伏期間を考えると中皮腫の発症は今後も続くため、新規発生患者を把握し、必要な救済策を講じる態勢を整えるべきだ」と話している。

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