|
近畿日本鉄道とオリックスが、子会社であるプロ野球球団同士の合併で基本合意したが、この動きは約70年の歴史をもつプロ野球ビジネスが、採算面で限界に近づいていることをも浮き彫りにした。集客や広告効果、本業との相乗効果などをかつてほど期待できなくなった球団の赤字は、グループ全体の収支が重視される連結決算時代になってから黙認できなくなった。不良債権をできるだけ減らしたい銀行側からの圧力も球団切り離しの動きを加速させる。
●親会社、連結決算に重荷 薄まる集客・宣伝効果
「もう近鉄だけの話ではないな」
近鉄と同様に赤字球団の幹部は、今回の動きがパンドラの箱を開けたとみる。03年度に10億円超の黒字を確保した巨人や阪神など一部を除き、球団経営は全般に厳しく、親会社から支援を受けて帳尻を合わせている。
それでも、これまでは「リーグ6チーム体制」を崩さなかった。近鉄がそのタブーに挑んだことで、球界に異変が生じるのは必至との見方だ。
現在、パ・リーグ首位の福岡ダイエーホークスも例外ではない。昨年は阪神との激戦の末に日本一となり、主催試合で過去最高の322万人を動員。それでもセ・リーグ球団と違い、全国中継がほとんどないため放映権収入は伸びず、球団の収支は15億円程度の赤字基調が続く。
ダイエーは昨年、「福岡事業」のうちドーム球場とホテルを米投資会社コロニー・キャピタルに売却する際、銀行団に球団売却も迫られた。だが「勝てば売り上げに貢献する」として、保有に落ち着いた経緯がある。
実際に優勝で、下半期のダイエー店舗の既存店売上高は3%幅上昇した。だがチーム成績に左右されるのは不安定なうえ、今期中にグループの有利子負債を1600億円削減しなければならず、球団売却話が再燃しかねない状況。「秋までに当然持ち上がる」と認める関係者もいる。
「宣伝効果があるから赤字でもいい」とされてきた球団経営は連結決算時代のいま、株主代表訴訟に持ち込まれかねないリスクに変わっている。
オリックスが近鉄との球団合併をめざすのも、球団を持つ意義に変化を感じてのことだ。オリエント・リースから社名変更する直前の88年に阪急電鉄から買収した後は、個人向け事業の拡大期にもあたり、「知名度アップの貢献度は計り知れなかった」(球団関係者)。だが、社名が定着したいま、「経費を最小化し、球団単独の存在価値を高めることが重要」になってきたという。
阪神電鉄は03年の経営計画で、「タイガースのブランド価値経営」を進めると明記。次々と関連商品を打ち出し、選手補強に投資を惜しまず、グループ全体に相乗効果を及ぼす旧来のビジネスモデルで増収効果を得る。
だが、「選手の年俸高騰が経営を直撃」(ロッテ)との事情は全球団に共通しており、今後の球界再編のうねりは、それぞれの経営戦略の練り直しを迫りそうだ。
●銀行からリストラ圧力
「球団を早く売却すべきだと言い続けている」
近鉄本体の主力取引銀行・東京三菱銀行のある幹部は、近鉄とオリックスの球団合併構想が明らかになる以前から、そう語っていた。バブル期の過剰投資がたたって経営が悪化した近鉄に対し、抜本的なリストラを求めつつ、球団の売却先探しも手伝ってきた。
近鉄はここ数年で、連結赤字に陥りながらグループのテーマパークの再建や不動産開発子会社のてこ入れなどを進めた。年間40億円もの赤字を垂れ流す球団。例外扱いはもはや限界だった。
プロ野球球団のリストラで、金融機関の影がちらつくのは近鉄だけではない。ダイエーも経営再建の一環で金融機関側に球団売却を求める声がくすぶり続ける。
大手銀行は05年3月期末までに不良債権比率を半減することを求められている。このため不良債権処理の促進や、融資先の経営悪化防止は喫緊の課題だ。「経営再建をめざす融資先が、本業の強化に直結しない事業を見直すのは当然だ」(大手行幹部)との姿勢を崩していない。
(06/15 11:02)
|