大山鳴動のあげく、「もう一組の合併」は形にならなかった。8日のプロ野球オーナー会議。明らかになったのは、その組み合わせがロッテとダイエーだったことまでだった。7月7日に西武の堤義明オーナーが「もう一組が進んでいる」と語ってから2カ月。ダイエー本社をめぐる経営再建が球界再編に複雑に絡んでいることも浮き彫りになった。
○本社の再建、影落とす
2時間50分の会議後、堤氏が最初に出てきた。「合併を進めていると言った球団はダイエーとロッテだった。今日、みなさんに申し上げました」。報道陣の質問前に自ら切り出した。パの実力者として「4球団にしての1リーグ移行」の動きを牽引(けんいん)してきただけに「うまくいかなくて大変残念です」。
7月の堤発言に背中を押され、当事者として動いたロッテの重光昭夫オーナー代行は「前回のオーナー会議の前からダイエーとコンタクトを取ってきた」。確かに中内正オーナーと連絡を取っていたが、ダイエー本社とではなかった。
初めて、ロッテから合併を持ちかけられたのは8月6日だったと、ダイエー本社関係者は言う。UFJなど主要3行の首脳が、産業再生機構の活用を突きつけた翌日だ。
ロッテ球団は観客動員数の低迷に悩む。人気球団の合併はおいしい話。それも、重光武雄オーナーの出身地韓国に近い福岡が拠点の相手だから、魅力はあったろう。
だが、ダイエー側は「そのつもりはない」とあっさり断った。土谷忠彦・球団担当常務は「合併に関して他球団と話したのは、この時だけ」と受け止めている。
再生機構の活用方針を繰り返す主取引3行に対し、高木邦夫社長は「機構の活用は考えていない。独自再建が可能」と再三強調。球団については「本業との相乗効果が大きい。単独で継続保有する」と繰り返した。
8月下旬、パ・リーグの小池唯夫会長と他の4球団の連名で「進めるなら早くして欲しい」と両球団に書面が出されたが、進展のないまま、この日を迎えた。
○機構活用なら再編浮上
2リーグ維持を主張してきた広島の松田元オーナーは「来季はセ6、パ5の2リーグと理解している」。ヤクルトの堀澄也オーナーも「これは決定事項」と、来季に向けた再編議論は、この日で終了との認識を示した。
だが、議長として記者会見した巨人の滝鼻卓雄オーナーは「今日の段階で」という『ただし書き』付きで「セ6球団、パ5球団」と説明した。小池氏も「大きな変化があった場合は、そのときに協議」と「完全決着」を否定する。
「ダイエー本社の再建がどうなるか」という意識が背景にある。会議後「緊急事態が生じた場合はオーナー会議を招集することになった」と語った中内氏は、「緊急事態とは?」との質問に「ダイエー問題でしょう」。
この日夜、ダイエーの高木社長は「他球団のオーナーがご心配されている向きがあるが、昨年度も今中間期も経常黒字を出している」と不快感を示した。
だが、政府保証を付けた公的資金を使う再生機構を活用すれば「しょせんは娯楽のプロ野球。球団を持ち続けるのは国民感情から許されない」(大手行幹部)の声が大きくなることが考えられる。ダイエーの望む独自再建の道を歩いても、球団を保有できるかどうかには、複雑な要因が絡む。
ホークス球団を切り離すことになった場合、球界はどう動くのか。ロッテとの合併が再浮上するケースも考えられる。球団解散もある。この場合、パは4球団に減る。身売りならセ6、パ5の構図は変わらない。
ダイエーの動向とは別に、オーナー会議が決めた新規参入条件の緩和が実現すれば、新たな企業の参入も考えられる。会議の内容を聞いた日本ハムの大社啓二球団会長は「参加料などを見直すと言うのならセ6球団、パ6球団もあると思う」。すでに、インターネット関連企業のライブドアは、新球団での参入を目指しており、今月中にも正式に申請する意向だ。
(09/09 03:01)
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