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球団合併に揺れるプロ野球界に、参入方針の企業が再び現れた。またもインターネット事業を営む新興企業の楽天だ。成熟業界の大企業ばかりで運営してきた「ムラ社会」(球界関係者)に、伸び盛りの若い企業が挑戦状をたたきつける構図といえる。こうした動きに球団誘致をめざす地方都市からは歓迎の声があがる。球界の縮小均衡路線に反対する労組プロ野球選手会にとって、心強い応援団が増えつつある。
●意味は――新興業種にメリット
「検討を開始した段階です」。楽天の三木谷浩史社長は、同社のプロ野球への参入方針が報じられた15日、慎重な言葉遣いで談話を発表した。とはいえ、7月に記者会見で参入の可能性を尋ねられ、「プロ野球はややこしくて。サッカーを選んでよかった」と距離を置いていた時点からは百八十度の方針転換だ。
三木谷氏の個人事務所が2月、サッカーJリーグのヴィッセル神戸を買収。これをきっかけにプロ野球球団の買収話が舞い込むようになったが、三木谷氏自身が興味を示すことはなかった、と関係者は語る。
ただ、周囲の状況が変わった。選手会のストを巡る10日の交渉で新規加盟料の撤廃などが決まった。楽天関係者は「参入障壁が低くなった。(社長は)冷静に参入の利点を感じているのではないか」と解説する。
新興のネット企業の課題は認知度をどう広げるかだ。大手ネット会社幹部は「業界でどんなに大手でも、ネットに詳しくない人への知名度は低い」とこぼす。
その点でプロ野球は魅力的だ。同じネット業界のヤフーは03年、オリックスの本拠球場の命名権を2年間、2億円で購入。「ヤフーBBスタジアム」の名が連日テレビや新聞に流れ、「安い買い物だった」(同社幹部)とされている。
9月中にプロ野球への加盟申請の方針を表明しているネット企業のライブドアも、6月に近鉄球団の買収に名乗りをあげて知名度が飛躍的に高まった。
ライブドアには、宣伝効果にとどまらずインターネット事業そのものへの相乗効果の期待もある。例えば、試合のインターネット中継や有料会員と選手との双方向での情報のやりとりを想定している。堀江貴文社長は「毎日違うドラマが生まれるスポーツはネットに乗せるコンテンツ(情報の内容)として有望だ」と語っている。
●選手は――スト巡る交渉、先鋭化へ
楽天の参入表明は、16、17日の経営者側と選手会側の団交にどんな影響を与えるのか。古田敦也選手会長は「楽天はビジネスチャンスだと思ってるんじゃないの。シダックスとかも(参入候補に名前が)出ているでしょ。それだけ興味がある人がいるということ」と話した。
選手会は近鉄とオリックス合併実施時期の1年延期を求めているが、オーナー会議の議決を経ており実際には覆すことは難しい。
このため選手会が18〜19日に構えているストライキの回避は、(1)新規参入を認め、来季、セ6球団、パ6球団で運営することの確約(2)近鉄選手の新規参入球団への移籍の自由を認めること、という選手会側の要求を経営者側がのめるかどうかにかかる。
新球団の本拠地など具体的な構想でも意見が割れる可能性がある。本拠が神戸なら、同じ兵庫県にいる阪神タイガースに影響が出る。久万俊二郎オーナーは「野球界に入ってくるのはよろしいこと。でも、なんで神戸なんですか。うちと同じところは嫌。競争相手のいないところにいってもらえばいい」と話す。
また、ライブドアと楽天のどちらかを選ぶとなれば、結論までに時間がかかる。ただでさえ、根来泰周コミッショナーは「時間的に来季から(の参入)は難しい」との見方を示している。
選手会側は、営業譲渡で近鉄球団が消滅すれば近鉄の選手には移籍の自由が発生する、と主張している。これに対し経営者側は合併球団が優先的に選手を確保する方法を内定しており、対立は避けられない。
スト突入か、回避か。交渉期限の17日午後5時ぎりぎりまで折衝が続くことになる。
●本拠は――「我が町へ」皮算用
球界再編に呼応する動きが、地方からも出ている。
「本拠を宮城にということなら県として歓迎する」。宮城県の浅野史郎知事は13日、ライブドアなどの球界参入について報道陣に語った。仙台は77年までロッテの準本拠地。「東北にプロ球団があるといいな、というのが地域ファンの気持ち」
最大の課題は球場だ。仙台市内にある県営球場は2万8千人を収容できるものの、築54年と老朽化が激しい。3年ほど前から経済界や県議・市議など複数グループが、ドーム球場を造ってプロの試合をより多く誘致しようと構想を温めてきた。関係者は「球界再編で宮城にチームが来てくれるなら、ドーム構想にも弾みがつく」と話す。
近鉄の地元・大阪では、合併に反対する活動を続ける「大阪の未来を考える会」が府民球団の創設構想をまとめ、大阪府などに提案する予定だ。府民による株式購入などの手法を検討している。
大阪市も積極的だ。市幹部は「新規参入が認められれば、参入しようとする企業と協議に応じる用意はある」。
楽天が新球団の本拠と想定するヤフーBBスタジアム(神戸市須磨区)を所有する神戸市。「かつての東京ドームのように、二つの球団が1球場を使ってくれるようにでもなれば」(幹部)と早くもそろばんをはじく。ただ、ある担当者は「合併球団は神戸に残ってくれるはず。新球団の参入の話は現時点ではコメントできない」と戸惑いの表情も見せる。
(09/16 10:58)
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