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2012年12月9日01時30分
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〈新年取材班日誌〉コールセンターに見る沖縄の格差

写真:県職員の案内で沖縄IT津梁パークを視察する人々=沖縄県うるま市、矢木隆晴撮影拡大県職員の案内で沖縄IT津梁パークを視察する人々=沖縄県うるま市、矢木隆晴撮影

 新年企画班の取材で、沖縄を歩いている。沖縄では10月にも、コールセンターの取材をした。

〈特集〉新年取材班「ビリオメディア」仲村記者のツイッター

 104の電話番号問い合わせを受けたり、買った商品の使い方を答えたり。電話で顧客の要望に応えるのが、コールセンターの役割だ。1990年代に始まり、「顧客満足」を重視する企業が増えるにつれて、急速に発達してきた。オペレーターの数は、全国に90万〜100万人といわれている。

 取材のきっかけは、5年前まで勤務していた長崎での経験だ。当時、次々にコールセンターが進出し、県も「雇用の確保につながった」と実績を誇っていた。

 コールセンターの利点は、通信設備さえあれば設置しやすいことだ。当時、全国の自治体がこぞって誘致に力を入れていた。長崎県は土地や水が乏しく、離島も多い。工場誘致はなかなか難しいため、県の期待も大きかった。

 ただ、地元では「クレーム対応ばかりで仕事が大変」「都会なら辞めてしまうから田舎に来たのでは」という声も聞いた。現場の仕事を見たいと思っていたことが、今回の取材につながった。

 沖縄を選んだのは、コールセンター誘致の先駆けだからだ。1998年から、通信費などの補助制度を打ち出した。これまでに県外から約70の企業が進出。1万5千人以上の雇用を生み出した。誘致できず苦労している自治体も多い中では、「勝ち組」といえる。

 ただ、雇用の大半は非正規。沖縄でも「コールセンターはきつい」という話が広まって敬遠され、人材確保に苦労しているという。

 県が進出を検討する企業向けに開いたツアーも取材させてもらった。企業の関心は、やはり賃金と人材確保の面。企業にとって、沖縄に進出する最大の利点は、コスト削減なのだ。

 「ここはミニ中国なんです」。東京から進出した人材派遣会社の社員からは、そんな言葉も聞いた。「沖縄の人の仕事は甘い。首都圏とはレベルが違う」とも。

 果たして、そうなのだろうか。

    ◇

 違う方向にかじを切り始めた企業もあった。

 那覇市の新都心に事務所を構えるオリックス・コールセンターは、1999年に設立された。現在は、電話で問い合わせを受け付ける仕事は、ほとんどやっていないという。

 担うのは、保険や不動産、自動車リースなど、グループ11社の事務作業。バラバラにやっていた業務を見直し、集約することで、効率化を目指している。業務を通じ、無駄が見えてくることもある。東京に改善を提案するのも、大事な役割の一つだという。

 同社も設立当初は、沖縄の人件費の安さに着目していた。しかし、2007年ごろからグループ全体の業務の効率化が進められたのに合わせ、「事務のプロ集団」として人材を育てる方向にシフトしたという。

 「コストだけで勝負するなら、いずれ海外と競合せざるを得なくなる。単純労働を持ち込み、ギリギリの労働環境で人を使うだけでは、企業にもいずれ限界が来る。大切なのは、人の育成です」。同社の片平聡社長は強調する。ただ、社名もあって、人集めにはやはり苦労しているという。

 ある女性社員(43)は以前、別のコールセンターで働いていた。他社から業務を請け負う専門業者だったこともあり、重視されていたのは質よりも受信率。「早く切り上げろ」と指示されることも多かったという。

 「この会社に入って、本当に驚いた。同じグループの社員として扱われ、東京と同じパソコンの画面を見て、意見もいえるなんて」。入社した際は、長く勤めるつもりはなかったが、すでに13年になるという。

 彼女が発した言葉が、耳から離れない。

 「沖縄の人間は、どうせ内地の人に使われるだけ、という思いが、親の代からすり込まれている。実際、東京と沖縄では入れるシステムも別、という会社も少なくないんです」

    ◇

 私の両親は、沖縄で生まれ育ち、18歳の時、パスポートを持って「来日」。以来「本土」で暮らす。詳しく聞いたことはないが、その頃はまだ、沖縄への差別が根強く残っていたようだ。私もそれを引き継いだのか、自分の家の食べ物や風習が他の家と違うことや、名字ににんべんがついていることに、コンプレックスを感じながら育った。

 変化が訪れたのは、高校生の頃だ。歌手の安室奈美恵さんをはじめとする沖縄アクターズスクール出身のミュージシャンが大ヒットし、沖縄ブームが訪れた。その頃、母がぽつりとつぶやいたことがある。「あなたたちは、沖縄出身と堂々といえていいわね」

 NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」のヒットなどを経て、沖縄ブームはすっかり定着したようだ。だが、ルーツが沖縄であることを明かした時、「いいなー」といわれると、私は今でも複雑な気持ちになる。

 最近、沖縄で育った同世代より下の人と話すと、状況は少し変化しているようには感じる。ただ、長い間、沖縄の人たちがそんな思いを抱えてきたことは、「本土」ではどれくらい知られているのだろう。

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