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2012年12月21日23時00分
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つぶやき分析、議論を可視化 濱野智史さん

写真:濱野智史氏拡大濱野智史氏

 短文投稿サイト「ツイッター」を流れた政党や政策に関連した「つぶやき」の日々の変化について、「ツリーマップ」と呼ばれるグラフィックで再現した。今回の衆院選で「つぶやき」はどう増減したか、ビッグデータと呼ばれる膨大な情報を分析する意義は何か。グラフィックを制作した日本技芸のリサーチャーで、批評家の濱野智史さん(32)に解説してもらった。

〈ビリオメディア〉総選挙に関するつぶやき調査

    ◇

 「ツリーマップ」は、このほど行われた衆院総選挙の期間中、ツイッター上で人々が特定の政党・政策についてどのようにつぶやいていたのかを可視化した「地図」状のグラフである。四角の面積はつぶやきの「数」に比例しており、大きいものほどそのトピックについて多くの投稿があったことを示している。それぞれの政策や政党を表す四角は、政策カテゴリや政党名ごとに色を塗り分けており、どれに関するつぶやきが多かったかを直感的に把握することができる。また「政党」のマップでは、人々のつぶやき中でも「ポジティブなつぶやき」は緑色の点線、「ネガティブなつぶやき」は赤色の点線で塗り分けられており、一目でその比率が俯瞰(ふかん)できるようになっている。

 近年、ツイッターなどでの膨大なつぶやきのデータ(「ビッグデータ」などと呼ばれる)を可視化することで、世の中の動向や流行を把握しようとする動きが主にマーケティング分野を中心に進んでいる。ただしこうした手法は、もちろん政治のような分野でも十分に応用可能である。そこで今回、選挙期間中のツイッター上の世論の流れを俯瞰するにあたって、株式会社日本技芸では数ある「ビジュアライゼーション」手法の中でも「TreeMap(ツリーマップ)」と呼ばれる手法を採用することにした。

 これはもともと米ウォールストリート・ジャーナル紙がオンラインサイトで公開している、アメリカの株式市場の動向を俯瞰するためのサービス「Map of the Market(http://www.smartmoney.com/map-of-the-market/)」などで用いられていた手法である。金融市場では、外部環境(政治や経済)の動きを受けて取引額や取引量がめまぐるしく変化する。その流れを俯瞰するために考案されたこの手法を援用すれば、おそらく同じく移ろいやすいと思われるツイッター上のつぶやきの流れ(ネット民意)を的確に俯瞰できるのではないか。こうした仮説のもとで、私たちは今回このアルゴリズムを選び可視化を試みた。

 果たして、その結果はどうだったか。

 政策マップのほうから見ていくと、当初は「原発」が圧倒的多数を占めていたが、世論調査で自民党300議席超との予想が伝えられると、憲法改正に向けた動きがにわかに現実味を増したからなのか、「憲法」の面積が拡大した。また12月12日には北朝鮮がミサイルを発射したが、これにもツイッター上の世論は敏感に反応。「北朝鮮」の面積は大きく拡大した。

 しかしいずれにしても、「原発」が相対的に見て常に最も大きな面積を占めていたことには変わりはなかった。原発問題は今回の総選挙では大きく情勢を分けるトピックではなかったかもしれないが、これは先の福島第一原発事故以来、一貫して大きな問題であり続けており、決してこの問題はどこも無視できないことを示唆している。

 また政党マップのほうを見ていくと、開始当初から自民党と民主党が大きく面積を占めあっており、第三極の日本維新の会がそれに続く構図が見られる。日によっては日本維新の会が1位を占めたときもあり(11月29日)、また日本未来の党も第4位につけ、比較的大きな面積を占めているように見える。

 こうして見ると、ツイッター上の政党に関するつぶやきは、実際に各党が獲得した票数と連動しているわけではない。これは当然で、このマップが表しているのは人々が各党に抱いた興味・関心の比率であって、実際に投票行動に出るか否かの支持を表したものではないからだ。このマップで見ると、民主党に関するつぶやきは少なくなかったように見えるが、実際の票数にはつながらなかったと見ることもできる。また、第三極以下の勢力にしても、このマップで勝ち得た面積ほどには、実際の有権者からの支持を集めたわけではない。

 しかしこれをもってして、「ツイッターの世論は実際の国民の世論を反映しない」などと結論するのは早すぎる。このマップのだいご味は、あくまで金融市場のように揺れ動く動向を俯瞰するためにある。世論が移ろいやすいのは世の常だが、こうした「可視化」の手法があればこそ、めまぐるしかったわずか2週間の選挙期間中、果たして何が議論の「柱」や「軸」となるべきだったかを探ることができる。まだまだこうした政治分野におけるビジュアライゼーション手法は発展途上にあるが、ぜひ読者の皆様にはこのマップを見て頂いて、新たな「世論」の俯瞰に向けた試みに参加して頂ければ幸いである。

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 はまの・さとし 1980年生まれ。批評家。日本技芸リサーチャー。専門は情報社会論。著書に『アーキテクチャの生態系』

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