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2013年1月7日14時00分
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〈取材後記〉支持者が被害者に 続く「いじめ」の連鎖

 【藤えりか】「申し訳ないですが、事情で取材を受けられなくなりました」

 クリスマス目前の12月下旬、取材を予定していたカナダ・カルガリーの女性からメールが届いた。取材の詳細を詰めるため、少し前から何度か電話やメールをしたものの応答がなく、心配していた矢先だった。具体的な事情も書かれていたので、日程さえずらせば大丈夫では、と期待してその後の返事を待ったが、再び連絡がとれなくなった。

 彼女は、ネット上の嫌がらせを機に自ら命を絶つに至ったカナダ西部ポートコキットラムの女子高生アマンダ・トッドさん(15)に、死後も襲いかかるネットいじめを降り払おうと闘っていた。何かあったのだろうか。この女性たちを取材した地元紙記者にツイッターで連絡をとり、電話した。すると、「彼女ら自身が今度は嫌がらせに遭い、連絡先をことごとく換えている」と教えてくれた。

 アマンダさんについて、改めて説明しよう。

 アマンダさんは12歳の頃、ビデオチャットで見知らぬ男に請われるまま胸を見せ、その様子を撮影されてしまった。写真はフェイスブック上の「友達」などにばらまかれた。学校にも広まっていじめに遭い、うつに陥り自傷行為を繰り返す。その顛末(てんまつ)を訴える動画を本人出演で撮影、ユーチューブに投稿。約1カ月後に自殺した。

 フェイスブックには彼女を悼むページが多くできた。だが同時に、死者にむち打つ暴言も書き込まれるようになった。「そもそも浅はかだ」といった批判もあった。理解者を装い近づいた男に体を委ねたことも動画で告白しており、そのことへの非難もあった。

 だが年端もいかない少女に、ネット上の分別を大人がただ求めるのは酷だ。欧米でフェイスブックは今や、若者が「友達」を増やし情報を交換する必須インフラ。いったん悪い情報が出回ると逃げ場がない。精神的に追い詰められ、誰かにすがりたくなり、判断力も失ったことだろう。

 カルガリーの女性たちはこうした状況に胸を痛め、監視する活動を開始。フェイスブックにいじめ撲滅ページも設けた。女性の一人はアマンダさんへの中傷をフェイスブック上に書いた男の身元を突き止め、職場に通報。男は解雇された。

 だが、これが「やり過ぎ」と批判を招き、逆に嫌がらせのメッセージを受けた。女性の一人は結局、電話番号もメールアドレスも変えたという。彼女らのフェイスブックページはいつの間にか消えていた。

 いじめを根絶やしにしようとエスカレートさせるうち、矛先が自らに。どちらにとっても終わらない「いじめ」の連鎖にため息だ。

 ツイッターなどを通じて会えたアマンダさんのお母さん、キャロル・トッドさん(50)にこの話をしたら、こう言った。「何かをやめさせたいと考える人たちの側にも支持者はいる。正しいことをしていると思っていても、(ネット上で)慎重にならなければならない」

 キャロルさんは事件後、ネットいじめ撲滅運動を進める傍ら、「親は何をしていたんだ」といった批判も浴びてきた。それだけに、重く響いた。

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