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2013年1月7日14時00分
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〈取材後記〉みんな居場所が必要だ クラブで得た問い

 【宮崎園子】小さいけれど、私には大きな数字だった。「1130」。2012年5月末、私が、少し前に一度風俗営業法の記事を紙面化していた東京・文化くらし報道部の神庭亮介記者と取材・執筆した記事が、朝日新聞デジタル版から直接つぶやきに引用された数だ。それがさらに、ツイッターやフェイスブックで“拡散”されていった。

特集:ビリオメディア

 クラブなどのダンス営業に警察の許可を義務づけ、原則深夜以降の営業を禁じた風俗営業法。その適用でここ数年、クラブの摘発が相次ぎ、ダンスの現場が寂れて萎縮ムードが広がった。そんな中、法改正を求める市民運動が始まったことを報じた記事だった。11月末、この問題がクラブを越え、公民館の社交ダンス教室や海の家のイベントなどにも影を落としていることを記事で問題提起すると、またそれがソーシャルメディアであっという間に広がった。

 紙面デスクには、「クラブっていうのは」「風営法の規定はですね」とあれこれ説明をして、ようやく紙面をとれたような記事。だが、ソーシャルでの反響の大きさに、「多くの人にとってこれがニュースなんだ」と思った。記者になって約11年。デジタル版の報道が増え、自分の記事がアップされる機会も増えた。災害や事件など「大ニュース」も色々携わったが、これまで書いたどの記事よりも大きな「反響」だった。

 クラブ通いをしてきたわけでもない。ダンスを生きがいとしているわけでもない。風俗営業法が適用され、クラブの摘発が相次いだって、正直、私の生活に大きな変化はない。

 そんな私が、ダンスの現場について取材しようと思ったのは、「なんで急に摘発が続くの?」「ダンスっていかがわしいか?」という素朴な疑問と、何となく感じた嫌な空気だった。「にぎわいも遊びもない社会を、私たちは目指すのか」「善良で清浄って、警察が判断することなのか」

 多くの人とつながり、直接話を聞き、色んな現場に行った。踊っている人たちは、みな生き生きしていた。おそらくそのまま街を歩いていても、だれも「いかがわしい」と思わないであろう「ごくごく普通の」人たちの笑顔があった。

 全体のほんの一部しか見られていない、という反省もある。もっと、法改正に反対する人の意見もたくさん聞きたかったし、ツイッターと無縁の人たちの声も聞きたかった。

 議論はむしろ、これからだと思う。

 誰だって居場所が必要だ。クラブを居場所とする人たち、ツイッターを居場所とする人たち。その限られた輪の中で何が起きているのか、どんな思いがうねりをみせているのか。そこに記者として飛び込み、それを外の世界にかみ砕いて説明をする。そして、広く問いかける。「みなさんは、どう思いますか」

 私に「絡んで」くれる人たちから、「私たちの声を聞いて、届けて」という無言のSOSと期待とを向けられていると、いつも感じた。ここで得たことを、次の“現場”で生かしたい。

 そして当然、ダンスの議論も追い続ける。

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