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2013年1月9日03時00分
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〈取材後記〉収集された市民の声、求められる透明性

 【竹下隆一郎】1月6日付の朝刊(5日にネットで先行配信)で「市役所がツイート監視 きっかけは被災がれき」という記事を書いた。北九州市が宮城県からの「がれき受け入れ」をきっかけに、「風評被害」につながるツイッターなどの投稿がないかを収集しているという内容だ。

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 取材をしたマーケティングの専門家や中央官僚は「今後は北九州市に限らず、行政機関が様々な目的でツイート収集をする可能性がある」と話す。

 ツイートを集めれば、市民の発言内容を行政側が保持できる。中には行政の施策への賛否や政治的心情もあるだろう。

 ツイッターと併せてブログやフェイスブックの発言が蓄積されて個人名が特定されれば、ある市民の過去の発言がいつでも閲覧可能になる。収集が1回限りなら良いが、賛否が分かれる課題が地域で浮かび上がる度に行えばその量も大きくなるに違いない。

 ツイッターは設定によっては発信元の地域が分かり、個人の行動履歴が積み上がっていく。また、専門家の間では過去のつぶやきから性別や職業を推測する技術の開発も進んでいる。将来、単なる「つぶやき」以上のデータベース作りにつながる可能性は十分ある。

 ここでポイントなのは、この種の情報は「後から検索できる」ということだ。ずっと見張って「監視」していなくても、いつでも特定の個人の情報が即座に調べられる。

 北九州市は「言論を抑え込もうという意図はなく、データは適切に管理する」としている。

 もちろん、行政側がツイッターなどの意見を追いかけていれば市民のニーズをきめ細やかに把握できる。ほかのデータも並行して分析すれば、家族構成や生活状況の違いによって異なるニーズがあることも把握でき、施策に反映させることもできるだろう。災害時にツイッターでSOSを発信している市民に手をさしのべることも可能だ。

 大量のツイートを収集して分析する手法は民間企業で広まりつつある。企業の窓口相談には寄せられない「本音」や「隠れたニーズ」が拾えるからだ。

 ツイッターは書いた瞬間、誰もが見られる。今後は行政機関や政治家がツイッターなどを使って「民意」や「市民の気持ち」を探る動きが広まるだろう。私は一人の市民としてそれは良いことだと思うし、従来の世論調査、パブリックコメント、タウンミーティングとは違った方法で意見を行政側に伝える手段にもなり得る。

 とはいえ、ツイートの体系的な収集にはどのような透明性が求められているのか。何を目的としてどんな保管方法を考えているのか。市民の戸籍や税などほかのデータと、ツイートの集積を組み合わせて市民一人一人のデータベースを作る可能性とその是非は。様々な議論が必要だと思う。

 同僚で、科学医療部の杉本崇記者にも意見を聞いてみた。「風評被害の対策とはいえ、北九州市もツイッターを介して市民の声を集めていることを広く伝え、意見を呼びかけるぐらいの透明性は必要でなかったか。今後、こうした意見収集はさらに広がるから、この事例をきっかけに議論が始まると良い」

 国立情報学研究所の佐藤一郎教授は「データ収集におけるプライバシー問題について多くの人の理解を得るためには、データ収集によるマイナス面よりもサービスや利便性の向上などプラス面が大きいことを示す必要があるのではないか」とも話す。

 ソーシャルメディアによって、誰もが直接行政に意見を言いやすくなる。政府が抱える膨大なデータを、利用者が使いやすい電子データ上で公開される「オープンガバメント化」も進むだろう。

 行政の「ビッグデータ」の管理にはどんな工夫が必要なのか。ルール作りは誰が担うべきか。今後も引き続き取材していきたい。

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