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2013年1月15日08時10分
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「問題解決に積極参加を」 在ベルリンの浅沼優子さん

写真:ドイツを拠点にクラブシーンを取材している音楽ライターの浅沼優子さん=ベルリン、宮崎園子撮影拡大ドイツを拠点にクラブシーンを取材している音楽ライターの浅沼優子さん=ベルリン、宮崎園子撮影

 【宮崎園子】国内外のクラブシーンに精通する音楽ライターで、3年前に独・ベルリンに移り住んだ浅沼優子さん(36)は、「外からの目」で、風俗営業法とダンスの問題を提起し、「踊ってはいけない国、日本」(磯部涼編著)で、ベルリンの事例報告をした。議論が乗り越えるべき壁とは。現地で話を聞いた。

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 ――なぜベルリンへ

 ベルリンには今、米国や英国、カナダなど世界中からダンスミュージックやクラブカルチャーに関心ある人がすごい勢いで集まっている。よそ者が大量に来ると大抵拒絶反応が起きますが、ここは歓迎。街の表情が変わっても多くの人が変化をよしとしています。

 日本に限らずクラブカルチャーはいろんなところで抑圧、制限されており、特にロンドンとかニューヨークなどかつて中心地と言われた都市も、前のように自由にクラブ営業できない状況。自由を求める人々が集まっているのは確かです。

 ――日本にポテンシャルは

 風営法の問題もあり、日本人が日本でクラブ営業するのでさえ後ろめたい。そんな中で外国人が来ますか。東京でも外国人主催のパーティーはあるが、減っているのでは。やりやすいところではない。

 そういう雰囲気って、クラブだけの問題ではなく、クラブと言うところにそれが表れただけで、そこに限定された問題ではない。

 ――日本では風営法規制についての議論が盛んです

 クラブがあって当たり前だった時代が残念ながら終わってしまった。私もそれが当たり前で育ったし、それを自分たちの手で守らなきゃいけないなんて思いもしなかった。音楽を聴いてお酒を飲んで楽しい時間を過ごしたことがある人が、それがなくなったら困るともっと強く思ってほしい。

 ベルリンの人たちは、すぐ立ち上がる。納得いかないと思うと、すぐにデモを起こし、自分たちの権利を主張していく。日本が見習うべき点だと思います。

 クラブ側の人たちも、自らが今まで向き合ってこなかった問題を清算する時期にきているのでは。グレーゾーンがあり、白黒つければいいという問題ではないが、白と黒を理解せずうやむやでいいということはない。どうしてもこれは譲れないという部分や、これだけは主張して当然だろうと自分たちが思うことはもっと発言していくべきでは。

 クラブオーナーやDJ、アーティストだけの問題ではなく、やはりお客さんの人口が多い。だから、ひとごとじゃなく「自分たちの居場所がなくなる」という危機感を持ち、問題解決に積極的に参加してほしい。

 ――議論がもう少し成熟するために何が必要か

 個人的に一クラブファンとして物足りないと思うのは、当事者の顔が見えない。有名なクラブやフェスティバルなどの名前が入っていないし、そういうところの人がどう考えているのか見えてこない。ことを荒立てたくないから顔を出したくないという気持ちもわかるが、もうちょっと形の見える人たちがはっきり発言していったら、もっと共感を得られると思う。

 ――運動が総選挙の時期と重なり、「投票しよう」という動きにまでなり、「投票してもかわらない」という虚無感になった。社会の何が問われているのか

 やっぱり特に自分の反省も込め、本当に平和すぎる時代に育ったんだと思う。何でもあり、自由で平和。周りに言われていることを守って生活していれば、さほど不自由もなかった。

 規制や規則、規範が、なぜそうかと考えずに無条件に従うクセが多くの日本人に染みついてしまった。私自身もぬぐい去れていない。「電車で傘を忘れないで」「リュックを前に」とかは電車のアナウンスで言われることではない。言われれば守るが、言われてやることではない。なぜそうしなきゃいけないか、本当にそうする必要あるのかと考え直していくと、今までの生活が不自然だったと分かってくるんじゃないか。

 何もかも人に言われて守って生きるだけの社会が、本当は窮屈だということに気付かないと。私はベルリンに来て気付いた。

 ――ソーシャルメディアで世論に火がつくことに未来はあるか

 ツイッターはすごく希望が見えるメディア。でもそこで行われる議論は日本の社会からみると本当に一部。私のように外国にいると、そこしかアクセスするポイントがないから過大反応してしまうけど。少なくとも「ほかにも仲間がいるんだ」「自分一人じゃないんだ」と確認できる。

 私には考えられないような正反対の主張をしているような人も、ツイッターには出てくる。こういう考えもあるんだって参考になる。実社会だったらそんな人とは会わず、意見すら聴かない。そういうのって今までなかったですよね。

 ただツイッターでやりとりしているだけではそこで終わり。ツイッターやフェイスブックで考えを共有している人たちが、もう少し生でつながり、外に出て行動につなげていければ、きっかけとしてのポテンシャルは大きい。反原発デモもツイッターがなければあんな人が集まらなかったし、情報も行き渡らなかった。

 日本ではツイッターがとても盛んだけど、リアルに声を上げるのは苦手ですよね。ただ、それがなかったことを考えると、本当に日本の人が気付くべき課題って気付かないままだった人が多いのでは。私も含め。

     ◇

 あさぬま・ゆうこ 1976年生まれ。東京、大阪、北海道、オーストラリアなどで育つ。慶大時代、ヒップホップ音楽を題材にした雑誌を2カ国語で自費出版。慶大院を卒業後、外資系広告会社勤務を経てフリーの音楽ライター、通訳、翻訳家に。2009年夏からベルリン在住。海外のDJやアーティストを日本に招く活動もしている。

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