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福井県内の原発の近くには、多くの活断層がある。複数の活断層が連動して動けば想定より大きな地震を起こし、原発の安全性にも影響するかもしれない――。「想定外」だった昨年の東日本大震災の後、こんな議論が続いている。
「三方断層帯も、ある論文に100%おんぶにだっこで、都合のいいところしか解釈していないとしか聞こえません」
東京都港区のビルの一室で、経済産業省原子力安全・保安院が6月19日に開いた専門家会議。東北大の今泉俊文教授らが、関西電力など福井県内の原子力事業者に厳しく指摘した。
この日、焦点になったのは、若狭湾から京都盆地南東部にいたる活断層帯「三方・花折(はなおれ)断層帯」のうち、美浜町沖の若狭湾から若狭町にかけて走る活断層の三方断層(長さ約26キロ)が、南側に伸びる花折断層北部(同約26キロ)など、ほかの活断層と連動して動くかどうかだった。事業者側は連動を否定した。しかし強い不満の声が上がったのは「連動しないという根拠が、ほとんど研究論文1本だけだった」(保安院幹部)からだ。
関電、日本原子力発電、日本原子力研究開発機構が連動を否定するために引用した研究論文は、2010年に書かれた。研究グループは09年、若狭町で地下60メートルまでを掘削調査し、地質や年代を分析。三方断層帯の平均活動間隔を最小で5300年程度と推定した。
関電などはこの部分から、三方断層帯の最新活動時期と推定される約350年前の1662(寛文2)年の寛文地震の後は当面動かないと主張。ほかの活断層との連動も否定した。
だが、論文の共同筆者の一人、岡田篤正・立命館大教授(京大名誉教授)は「我々の研究は一つの考え。議論で決定的に使われるのには違和感がある」と話す。岡田教授らが調べたのは三方断層帯の一部である「日向(ひるが)断層」の活動だった。三方断層帯全体が寛文地震で動いたかどうか、はっきりしない。岡田教授は「調査には費用と時間がかかる。三方断層帯全体が当分安全なのか、他の活断層と連動しないかなどを、具体的なデータで示すことはなかなか難しい」という。
政府の地震調査研究推進本部は、三方断層帯がマグニチュード7.2規模の地震を起こす可能性を指摘するが、別の断層と連動すれば地震の規模がより大きくなる。原発の耐震安全性にも影響しかねず、保安院は1月、全国の電力会社に再検討を指示。5月には関電などに対し、三方断層帯などについてさらに詳細な検討を求めていた。
背景には、規模や被害が「想定外」とされた昨年の東日本大震災がある。保安院は、それまで5キロ以上離れた活断層は連動を考慮しなくて良いとしていた方針を転換。8月、地質データを拡充するよう電力会社側に求めることを決めた。
保安院に代わって発足する原子力規制委員会にも、議論は引き継がれる見通しだ。(小堀龍之)