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2012年9月1日4時9分

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宍道断層、調査必要性の見解ずれ 中国電と学識者 島根

写真:06年に活断層が確認された丘陵。徳岡隆夫さんが広げた両腕が伸びる方向に活断層が通っている=松江市上本庄町川部06年に活断層が確認された丘陵。徳岡隆夫さんが広げた両腕が伸びる方向に活断層が通っている=松江市上本庄町川部

 地震につながる活断層は、島根県内にも点在している。中でも警戒が必要なのが、松江市北部の中国電力島根原発の南約2キロを東西方向に延びる宍道断層だ。ただ地層や地形に刻まれた活動の実態はつかみにくい。この断層に詳しい徳岡隆夫・島根大名誉教授(地質学)と共に、ポイントとなる3カ所を訪ねた。

 島根半島には、過去に岩盤がずれ動いた大規模な断層地形がある。2006年改定の国の新耐震指針は、12万〜13万年前以降に動いた活断層を考慮するよう求めており、中電はこのうち22キロ(松江市鹿島町古浦―美保関町下宇部尾)を「耐震設計上考慮する活断層」(宍道断層)としている。県の地震被害想定では初めて、宍道断層が加わった。

 まずは原発と活断層の距離が最も近い(約2キロ)、鹿島町佐陀本郷地区を訪ねた。イチジク畑が広がり、すぐ近くを断層が走ると推定される市立佐太小学校がある。中村教一教頭は「震源は特定していないが、身を守る初期動作など地震防災訓練を例年通り、秋に予定している」と話した。

 東の南講武地区へ。3号機増設に伴う過去の断層活動を直接観察する1998年の試掘溝(トレンチ)調査で、活断層が確認された所だ。水田を約13メートル掘り、約3千年〜1万1千年前に動いたと推定した。中電は1、2号機の建設時、「考慮すべき活断層はない」としていたが、確認により「8キロ」の存在を認めた。

 市の温泉施設「多久の湯」南の調査跡は、埋め戻され、周囲の水田と見分けがつかない。一般公開された際、説明を聞いたという近くの女性(72)は「活断層という言葉も聞いたことがなかった。今もなかなかぴんとこない」と話した。

 断層の長さについて中電は、住民らの運転差し止め訴訟の提訴後の04年に「10キロ」、08年には新耐震指針に基づく耐震再評価で「22キロ」に修正した。22キロへの延長は、中田高・広島大名誉教授(地形学)らが06年、上本庄町川部地区のトレンチ調査で見つけた活断層が糸口となった。

 3カ所目は、この川部地区。当時調査に協力していた徳岡さんによると、「10キロ」の東端から東へ約1キロの丘陵の休耕地で、約6メートル掘って確認した。谷の横ずれで出来た地形。1万年前から少なくとも5回動き、880年の出雲地震も引き起こしたと結論づけた。

 「活断層は掘る場所が少しずれるだけで、明瞭に見えないことが多い」と徳岡さん。中田名誉教授らが活断層を掘り当てたのは、4度目の調査だったと教えてくれた。埋め戻し跡の目印のポールは茂った夏草に囲まれていた。

 徳岡さんは、中電による「西端」「東端」の周辺調査について「活断層がありそうな場所からずれた地点で調査している」と追加の必要性を強調。中電島根原子力本部に22キロの評価を改めて取材すると「新耐震指針に基づいており、耐震再評価で妥当との見解が示されている。現時点で追加調査の予定はない」とした。

 活断層を意識すると、これまで訪ねたり、走り慣れたりした道が違った風景に感じられた。(斉藤智子)

■海底断層連動の恐れ

 県が15年ぶりに調査し、8月にまとめた地震被害では、「宍道断層」(22キロ)「弥栄断層帯」(47キロ)「大田市西南方」(27キロ)「出雲市沖合」(38キロ)「浜田市沿岸」(27キロ)「浜田市沖合」(27キロ)「宍道湖南方」(27キロ)「新潟・佐渡島北方沖」(131.1キロ)「隠岐北西沖」(36キロ)――の断層による9地震を想定した。

 被害が大きいのは「宍道断層」。最大で冬場に建物1万3968棟が全半壊、死傷者は冬の早朝に1424人(うち死者102人)と推定した。中国電力は島根原発への影響が最も大きいとみている。

 津波による死者が多いとみられるのは、海底活断層二つが一緒に動くと仮定した「出雲市沖合」で冬の早朝に最大139人に上る。

 中電によると、さらに近くの海底活断層と連動した場合、島根原発の揺れが一部の周期で宍道断層の想定を超える。このため経済産業省原子力安全・保安院の指摘を受けて6月、揺れの想定を見直した。8月28日、重要施設の耐震安全性に影響はない、とする評価結果を保安院に報告した。

 活断層の研究は進められている。「大田市西南方」の根拠となった活断層「大森―三子山断層」(14キロ)は、産業技術総合研究所(茨城県)などの地形調査で5月、長さが36キロに延びる可能性が指摘された。

 「浜田市沿岸」「浜田市沖合」は1872年に551人が亡くなった浜田地震の震源候補として推定。「新潟・佐渡島北方沖」「隠岐北西沖」は東日本大震災の津波被害を受けて想定に加え、微小地震が多い地域に「宍道湖南方」を仮定した。

 被害想定はホームページ(http://www.pref.shimane.lg.jp/shobobosai/bosai/jishinhigaisoutei_matome.html)で見られる。

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