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「何年も住んでるけど、部屋の下に断層があるなんて知らなかった」。大分市中心部に住む飲食店経営の女性(38)は、断層を示す地図を見て驚いた。自宅マンションが、市中心部を二分する「府内断層」の真上にあったからだ。「この近くにも活断層があるかも、と思ってはいたが、まさか真下とは……」。とりあえず、タンスのある部屋から寝室を移動するという。
大分県は関東から九州を縦断する大断層「中央構造線」の上に位置し、過去の活発な地震活動を示す活断層が多い。大半は県中部から西部にかけて帯状に集中し「別府―万年山(はねやま)断層帯」と呼ばれる。これは幾つかの断層帯の集合体だ。中でも、大分市―玖珠町を東西に走る長さ約40キロの「大分平野―由布院断層帯」は、国内でも地震の発生確率が高い活断層とされる。
この断層帯で予想される地震の規模は、東部が単独で活動した場合はマグニチュード(M)7.2程度、西部単独の場合はM6.7程度と予想され、30年以内の地震発生確率は西部が2〜4%、東部が0.03〜4%と見込まれている。
この断層帯には、大分市中心部を分断するように走る断層が含まれる。「府内」「志村」「三佐」の3断層だ。いずれも、断層の上に土砂が積もっていたため、近年まで存在が確認されていなかった。
府内断層は別府湾の海底から東へ延び、大分市街地の真下を走る。真上や付近には何があるのか。大分港から東にたどると、春日神社、大分赤十字病院、大分中央署、大分市役所、県知事公舎、府内城跡、県庁、大分市消防署、日本銀行大分支店、大分商工会議所ビル、舞鶴橋……。官民の重要拠点が集中していた。学校や工場のほか、高層マンションや民家も立ち並ぶ。
大分平野―由布院断層帯で冬場の午後6時に地震が起きたら、どんな被害が想定されるか。県の試算によると、この断層帯の西部で地震が起きると、大分市内は震度7〜6強の揺れに襲われ、2555人が死亡、約6万4千棟が全壊または火災で焼失、約21万8千人が避難生活を強いられる。
活断層の真上や付近の住民は地震の際、どうなるのか。気象庁によると、一般に、活断層に近いと揺れが大きいため、建物の耐震化などが必要になる。断層をまたぐような建物は、揺れだけでなく断層のずれによって建物が破壊され、被害が拡大する場合がある。
ただし、「断層からの距離」と「揺れの大きさ」に必ずしも相関関係があるとは言えず、断層の動き方や地盤によっては、断層から離れていても大きな揺れになることがあるという。
活断層で起きた地震が津波を引き起こすこともある。1596年の慶長豊後地震は、別府―万年山断層帯に含まれる「別府湾―日出生断層帯」で起き、津波を引き起こした。大分川河口で「沖ノ浜」と呼ばれた瓜生島が沈み、府内城下(現在の大分市中心部)が津波にのみ込まれた。山崩れも起き、多くの死者が出たと記録されている。
別府湾には、日出沖断層群、別府湾中央断層、杵築沖断層群など、津波を引き起こす可能性のある断層が幾つも走っている。
また、土砂が降り積もって出来た大分平野では、広範囲で液状化が起きる危険性もある。瓜生島は、河口付近に出来た地盤の緩い砂州だったため、液状化で消滅したという説もある。
別府―万年山断層帯には鶴見岳、伽藍岳、由布岳などの活火山もあるが、活断層の活動との関係は、まだ解明されていない。
九州には、このほかに、福岡県の警固断層帯や周防灘断層群、熊本県の布田川・日奈久断層帯、長崎県の雲仙断層群などがある。(神崎卓征)