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日本列島各地に無数に延びる活断層。関東や大阪などの大都市圏、福岡都市圏の地下にも活断層が走る。いつ起きるか分からない地震とどう向き合えばよいのか。現場を歩いて考えた。
【特集】足元の活断層 災害大国迫る危機約187万人が暮らす福岡都市圏を裂くように走る警固(けご)断層帯は、玄界灘から福岡県筑紫野市まで全長約55キロ。断層をたどった。
博多港にほど近い福岡市中央区の浜の町公園。2005年の福岡沖地震を受けた、市の調査検討委員会による掘削調査で、警固断層のずれと見られる痕跡が見つかった場所だ。地下8〜9メートル、約8千年前の大規模な地震で生じたものという。検討委は、警固断層は約4千年間隔で地震を引き起こしている可能性が高いとの見解を示している。
「いつ地震が起きても不思議ではない」。検討委員長を務めた磯望(いそ・のぞみ)・西南学院大教授(自然地理学)は警告する。過去20年の地震の震源を地図に落とすと、警固断層周辺だけが空白になる。地震のエネルギーが小出しにされず、長期間蓄えられていると磯教授はみる。断層の真上に立つマンションに住む男性(78)は「名前は知っとったが、こんな近くを通っとるとは知らんかった。またあんな地震(福岡沖地震)が起きたら大変じゃ」と驚いた。
天神に近い大名地区に入った。飲食店や家屋が密集し、福岡沖地震でも大きな被害が出た。行き交う買い物客を見ながら、いま激しい揺れに見舞われたら、と不安に襲われた。
福岡県が5月に公表した被害想定では、警固断層でマグニチュード(M)7.2の地震が発生した場合、死者約1180人、建物は約3万3千棟が全半壊する。8月29日に被害想定が発表された南海トラフの巨大地震よりはるかに大きな被害となる恐れがある。
断層をたどると、学校や病院が多いことに気づく。磯教授によると、断層に沿った幅500メートルの範囲に学校50校、病院20棟がある。福岡市中央区の市立警固小学校(児童約550人)は年1回の避難訓練のほか、落下物やブロック塀の倒壊に注意を促すマニュアルを家庭に配るなどしている。
断層は福岡市から南にも延びる。京都大防災研究所の川瀬博教授(地震工学)は「地盤は北部よりも固いが、揺れは南部でより大きくなることが予想される。福岡市より南の自治体も対策を強化するべきだ」と指摘する。(斎藤徹)
■避難所の見直し急ぐ
活断層による直下型地震や南海トラフなど海溝型の巨大地震・津波が起きたら、どこに逃げるのか。被害想定の見直しなどで、自治体は新たな避難所の設定や場所の変更を進めている。
約150万人が住む福岡市にとって、中心部を走る警固断層は大きな脅威。今年度の市地域防災計画に「減災」の概念を初めて盛り込んだ。
重点は被害を少しでも減らすための要援護者支援や、帰宅困難者対策の強化。市内で避難所に指定されている約420カ所のうち、公民館149カ所に簡易トイレ計約2万4千個を備えた。一方、災害時に帰宅困難者が泊まれる民間施設は、中央区大名と博多区のJR博多駅前の市内2カ所だけ。企業などに引き続き協力を呼びかけて施設を増やす計画だ。
南海トラフの巨大地震の被害想定に伴い、避難所の見直しを始めた自治体も多い。今回、最悪の場合で津波高14メートルとされた宮崎県延岡市は、東日本大震災後、想定津波高を従来の2倍に引き上げ、沿岸部233カ所を避難所に定めた。引き続き、地域住民と連携しながら内陸側に新たに約100カ所を追加指定する。
津波高が最大7メートルとされた大分県の臼杵市や同15メートルの佐伯市は、避難所に指定した小学校や公民館の指定を取り消したり、より高台に避難所を設けたりする予定だ。
鹿児島市は8月27日、地震で津波が起きたときに一時的に避難する「津波避難ビル」に、市内のホテルなど10施設を指定した。
熊本県は今年度中に浸水地図を作り、沿岸市町が避難所を設定するのに役立ててもらう。瀬戸内海に面した山口県や巨大地震による津波の恐れが少ない佐賀県でも、避難場所の見直しを検討する自治体がある。
防災担当者らは「詳細な浸水域がわかれば、それに基づき計画を見直すか見極めたい」と口をそろえる。
一方、急傾斜地が多い長崎市は30年前の長崎大水害など津波よりも土砂災害に悩まされてきた歴史があり、平地にある公民館などを避難所にしてきた。市の担当者は「津波では適切ではないと判断された所でも、土砂災害には有効な避難所もある」と言う。災害種別ごとに避難所を分けることも検討するという。