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2012年10月7日03時00分
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「日本のアトランティス」液状化で沈む? 大分「瓜生島」

写真:別府湾を埋め尽くすほど大きく描かれた瓜生島。大友時代を表したとする地図に掲載されている=県郷土資料集成から拡大別府湾を埋め尽くすほど大きく描かれた瓜生島。大友時代を表したとする地図に掲載されている=県郷土資料集成から

 大分には「日本のアトランティス」と言われる「瓜生島」の伝説がある。

 「昔、別府湾の瓜生島に祭ってあった神様に誰かがいたずらをしたら神様が怒り、罰が当たって島が沈んでしまった」という伝説は、県民にはよく知られている。1596年の慶長豊後地震で一瞬にして別府湾に消えたと伝えられるこの謎の島は、21世紀になっても「存在した」「作り話だ」と、熱い議論の対象として関心を集めている。

 島について正確に伝える文献が少ないため、真実はわからないままだ。諸説あるが、近年になって「液状化現象で消えた」という説が有力視されている。

 大分川はかつて西寄りに河口があり、現在の住吉泊地の沖合に、大量の土砂が積もってできた砂州があった。この砂洲は「沖の浜」と呼ばれ、貿易の拠点として栄え、岡藩の港などがあった。先哲史料館の平井義人館長は「当時『沖の浜』や『奥浜』と呼ばれた砂州が、のちに瓜生島と呼ばれるようになった」と考える。「軟弱な地盤にあった沖の浜は、地震の揺れで島全体が液状化してどろどろになり、同時に地盤も沈下したため、海底に向けて一気に崩壊したのではないか」。

 説を裏付けるように、これまでの調査で、沖の浜があったと思われる場所の沖合にかけて大規模な地崩れの跡が見つかっている。

 当時を記録する古文書には、大分市沿岸の村が水没したという記録も残っている。「沖の浜だけでなく、大分市の広い範囲で液状化が起きた可能性がある」と平井館長は話す。

 一方、人々の空想がかき立てられていくうちに尾ひれが付き、瓜生島は「巨大化」していった。幕末の1857年に別府の僧侶・舜堂倦玉が記した「豊陽古事談」では、別府湾を埋め尽くすほど大きな瓜生島の地図が紹介された。以来、「瓜生島は巨大な島」というイメージが定着した。

 平井館長は「豊陽古事談はいわゆる『偽書』。読み物として面白おかしく書かれた」と話す。調べたところ、豊陽古事談は「瓜生島」という言葉が初めて登場する「豊府聞書」(1698年)を見て書かれたとされているが、同書には瓜生島が巨大な島であったとは一切書かれていないという。平井館長は「あまりにも大げさに書かれたので、瓜生島の存在自体から疑われるようになった」と話す。

■液状化被害想定、全半壊4700棟超

 県内には、別府から由布院に伸びる「由布院断層」や、大分市を分断するように走る「府内断層」などが集中する「別府地溝南縁断層帯」がある。

 ここで地震が起きた場合、大分、別府、由布市と日出町で震度6強以上、大分、別府市の一部で震度7となり、埋め立て地など地盤の弱い場所では液状化現象が起きる恐れが指摘されている。

 その場合は大分市と別府市を中心に液状化被害が起き、県の想定では全壊が1793棟、半壊が2962棟となる。また、南海トラフ巨大地震が起きると、最悪の場合、県全体で2600棟が全壊するという試算がある。

 液状化は民家やマンションなどの建物に打撃を与えるだけでなく、道路や橋、港湾施設を破壊して避難や救助活動を妨げたり、水道管などのライフラインを寸断する危険性がある。

 液状化は、地表面から3〜5メートルが砂地盤となっている場合が多い。埋め立て地のほか、土砂が積もってできた河口の土地や、水田を造成したような場所でも起きやすい。

 大分、乙津、大野川の河口に形成された大分平野、中津平野、佐伯平野は、いずれも地盤が軟弱だとされる。だが市街地は平野に広がっており、高層建築物も集中している。大分市内の場合、降り積もった土砂が堆積した層は、深いところでは80メートル以上になる。

 被害を避けるには、地盤が強固なところに住むに越したことはない。だが、土地に限りがあるためそうも言っていられない。どうすればよいのか。

 液状化による家屋の倒壊で死者が出た例は少ない。対策は、家屋の財産としての価値を守るためのものと考えた方がよい。国土交通省市街地整備課は、これから家を建てる場合は、地盤改良を勧めている。

 地下水をくみ上げて地盤を引き締める工事は、30〜50坪の家を建てるなら、200万〜300万円程度の費用でできる。だが既に家を建てている場合は、同様の工事をすると費用が1千万円を超えてしまい、新築するのとあまり変わらなくなってしまう。

 傾いた家を元に戻すには500万円程度の費用が必要となるが、地震保険に加入する手もある。同課の田村英之課長補佐は「傾いた建物が倒壊しないよう、家屋の耐震化は必要」と話している。

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