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2:電波の跡地 有効活用、道筋見えず東京都内のホテルに乗用車、トラック、二輪車メーカー14社の部長らと研究者が集まった。10月17日、国土交通省肝いりのこの会議で、ある報告書が了承された。 地上デジタル放送への完全移行によって、交差点での交通事故を減らせるかもしれない。報告書は一見関係ないように見えるテレビと自動車を結びつけるものだった。 □ □ 11年7月に、今のアナログ放送は終了する予定だ。地上デジタル放送はUHF帯電波を使うため、アナログ放送用のVHF帯が、すっぽり空く。 アナログ放送が使っている100メガヘルツ前後のVHF帯電波は波長が比較的長く、広範囲に電波が届く。この電波を自動車から発信して他の車の位置を確かめ、衝突しそうになったら音などで警告、ブレーキなどを自動的に働かせる。VHF帯の「跡地」に自動車業界は注目している。 今、なぜ地上デジタル化が必要かについて、総務省はこの「跡地利用」を一大利点として強調している。携帯電話の普及もあって日本は電波過密国になり、大別しただけで40を超える用途の電波がひしめき合う。「跡地」ができれば、新たなサービスが可能になるというのだ。 しかし、「跡地利用」が最初から前面に出ていたわけではない。 □ □ 旧郵政省が地上放送のデジタル化を具体的に打ち出したのは97年。英米両国はその翌年に、世界の先陣を切って地上デジタル放送に乗り出そうとしていた。欧米がデジタル化に向かえば、テレビの製造や放送技術で世界トップを自負する日本が置いてきぼりにされかねない。「後れをとる」危機感が、デジタル化推進の最大の理由だった。 ところが、次第に「跡地」が幅を利かせた。旧郵政省の有力OBは「電波利用料がきっかけだった」とうち明ける。 11年まではアナログ放送がデジタル放送と並行する。混信を防ぐために「アナアナ変換」と呼ばれる周波数変換作業が必要になる。費用は現時点の見積もりで約1800億円。その捻出(ねんしゅつ)に旧郵政省が00年夏、目をつけたのが電波利用料だった。 □ □ 年間約500億円の利用料の大半は、放送局ではなく携帯電話会社が支払っている。「なぜ放送のために負担を強いられるのか」と反発した携帯会社に「電波に空きができれば通信業界も使える」と説得したという。 総務省は、携帯電話などの移動体通信に「跡地」を使わせる方針だが、具体的な用途は一向に固まらない。自動車向けサービスなどとの調整も進んでいない。立ち退き交渉が済んでなお、跡地の利用が決まらない状況に、総務省幹部は「技術革新が速いだけに、8年も先のことはわからない」と話している。 □ □ 地上デジタル放送の大きな受益者になる、家電業界。10年間で16兆円が、テレビを買い替えたり、今は7、8万円するチューナーを付けたりせざるを得ない、一般家庭からもたらされるとみられる。 東京都心にある大手家電メーカーでは、テレビ受信機が地上デジタル放送を正確に受信できるかどうかの点検が今なお続く。アナログテレビに比べ、地上デジタル対応型には1000倍規模のソフトウエアが内蔵されているという。テレビの「パソコン化」でチェック作業は格段に増え、将来の需要への期待とともに、足元の不安を抱えたまま放送開始を迎える。
(03/11/27)
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