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下:代役丼 頼りは豚、開発大慌てテレビでおなじみの経済アナリスト森永卓郎さん(46)はこのところ、牛丼の代役を求めて忙しく歩き回っている。 週2、3回は牛丼を食べてきた。半年で「並盛り券」10枚の特典にひかれて吉野家の株主になったほどの愛好家。 カレー丼、豚角煮丼など10種類以上も登場した各社の「代役丼」を一通り試したが、昼食の柱と決めるにはまだまだ頼りない。「牛丼は外食競争を勝ち残ってきた王者。これを上回る本格派は、そう簡単には現れないでしょう」 米国牛の輸入が止まって各社が大弱りしているところへ、アジアでは鳥インフルエンザが発生。「牛肉の代わりに鶏肉を」というもくろみも危うくなった。いま、頼みの綱は豚である。 「自信があります」 すき家を展開するゼンショーの小川賢太郎社長(55)は、記者会見で力こぶを作ってみせた。全国店舗の牛丼を、5日までに「豚丼(とんどん)」に替える。 東京・品川の同社本社ビル2階には、実際の店舗と壁紙までそっくり同じ模擬店舗がある。ここの客席カウンターで連日、小川社長は未完成の豚丼の味を試した。 「豚のよさをもっと生かせ」「牛丼を忘れろ」 試作と試食の3週間。これでいけると確信できたのは1月21日だった。口に運ぶと豚肉とショウガの香りが広がる。 一方、ライバルのなか卯が打ち出した「豚どんぶり」。商品開発部次長で調理師の伊東英昭さん(39)が受けた指令は、すき家とは逆に「牛丼とそっくりの味を作れ」だった。与えられた時間は10日。タレ工場とやりとりを重ね、煮込み方を一から工夫した。 丼がこれほど注目されたことは、かつてない。 くらしき作陽大で食文化史を教える小菅桂子教授(70)によると、丼は明治以降、手っ取り早く食べられる和洋折衷の料理を数々生み出した。 豚丼(ぶたどん)のふるさとは北海道帯広市。雪に覆われたJR帯広駅前の「銀座通り」を歩くと、豚丼の看板があちこちにある。ここではロース肉を使う。 東京・早稲田で生まれたソースカツ丼は、福井市で健在だ。味を受け継ぐ3代目、高畠範行さん(51)は「牛丼問題はひとごとではない。肉を替えるのは大変なこと」と同業者を思いやる。 各地で息づく「ご当地丼」。大慌てで開発された「代役丼」。牛丼が復活するまでの間に、はたして日本のどんぶり事情はどう変わるか。新たな競争が始まった。 2日、業界大手の先頭を切って、なか卯の店頭から牛丼が消えた。 豚どんぶり1杯400円。牛丼より120円高くなった。 (朝日新聞2004年2月3日夕刊紙面)
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