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【カンヌ映画祭】
 
劇的12日間、アジア勢健闘 カンヌ国際映画祭を振り返る

 第57回カンヌ国際映画祭が23日終わった。仏映画業界労組の争議の中の開幕から、ブッシュ政権を痛烈に批判した「華氏911」のパルムドール受賞まで、なまじな映画よりもドラマチックな12日間だった。そんな中、逆境を生き抜く子供たちを見つめた日本映画「誰も知らない」が静かな共感を集め、14歳の柳楽(やぎら)優弥が史上最年少の男優賞を獲得した。主な上映作を振り返る。

 カンヌはマイケル・ムーア監督のパルムドール受賞作「華氏911」の再上映で大団円を迎えた。

 前回の大統領選の開票疑惑を振り返る冒頭から、ブッシュ政権への対決姿勢がありあり。同時多発テロ発生時、小学校参観中の大統領にすぐ連絡が入らなかったことを「スクープ映像」で伝え、閉鎖中の空港からビンラディン一族らがひそかに出国したことも暴いた。

 だが、これら「新事実」はいわば序章。戦火に家族を奪われた人々の悲しみに焦点を合わた後半が、この映画の眼目だ。破壊されたイラクの街のおびただしい死体、涙や叫び。一方、不況に苦しむ監督の故郷フリントでは、米軍が若者のいい働き口だ。貧しい者を戦場に駆り立て、富める者の利権を守る構図が鮮明に浮かび上がる。それを容認する人間へのストレートな憤りが、心を揺さぶった。

 激戦の末にパルムドールを同作に譲ってグランプリを受けた韓国映画「オールド・ボーイ」は、当初、別部門に出品が内定し、コンペには選ばれていなかった作品。泥酔中に拉致された中年男が、15年間の監禁生活から開放され、真相を探る戦いに挑む。

 日本の漫画を大胆に翻案した流血の復讐(ふくしゅう)劇。ヤクザ集団と男の対決を長いワンショットでとらえるなど、計算された映像が秀逸。日本なら低予算のビデオ映画になりそうな題材を、人気のチェ・ミンシク主演の娯楽映画として成立させた点に、韓国映画界の勢いを感じた。

 アジア勢は他でも気を吐いた。最年少の男優賞俳優を生んだ是枝裕和監督の「誰も知らない」は、一番手で登場し、最後まで感動が語り継がれた。「何本見ても、彼(柳楽)の顔が僕の中から離れなかった」と審査委員長のクエンティン・タランティーノ。映画初出演の少年からそれほどの存在感を引き出した演出の力も忘れてはならない。

 女優賞は「クリーン」のマギー・チャン。元夫のオリビエ・アサイヤスの監督作。子供と暮らすのを夢見る麻薬中毒の女という役も、この人が演じると神々しい輝きがあった。

 タイ初のコンペ出品作となったアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の「トロピカル・マラディ」は審査員賞を受賞した。中島敦の「山月記」に触発された作品で、前半はゲイのラブストーリー、後半はジャングルの中のファンタジー。物語は分かりにくいが、恍惚(こうこつ)感に満ちた映像は忘れがたい。

 監督賞は「エグザイルス」のトニー・ガトリフ。幼い頃にアルジェリアからフランスに移住した監督自身の思いをこめたロードムービー。多彩な音楽で楽しませたが、ロマを描いた過去作と比べて新味はなく、受賞は意外だった。

 脚本賞の「ルック・アット・ミー」は記者たちの評価が最も高かった群像劇。内気な娘と武骨な父の関係を軸に、感情のすれ違いを巧みに見せた。監督で出演もしているアニエス・ジャウイと父親役のジャンピエール・バクリの共同脚本。賞が小さすぎると不満の声も上がった。

 押井守監督の「イノセンス」は残念ながら選から漏れた。膨大な引用を含むセリフを字幕で読むのに忙しく、映像を楽しめないという声をよく聞いた。 (04/05/25)





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