産業技術総合研究所・保原浩明 義足選手、五輪記録に迫る 動画(3分29秒)

シーン1

(質問) アスリート用義足の進歩について

(保原) アスリート用の義足が誕生したのは決して古いわけではありません。1984年に「フレックスラン」という炭素繊維製の義足が作成されました。これは日常用、歩くための義足だったのですが、すねの部分から爪先の部分にかけて1枚のブレードがあって、さらに、かかとから足の裏にかけてもう1枚のブレードで構成されています。これを使うとより長い時間、早いスピードで歩けますよと非常に大好評だったんですが、当然これで走ることによって、より速く走れます。しかしながら、100m走にみられるような短距離走で、かかとというのはあまり作用しません。結果としてかかとの部分をより小さくして上にあげたようなものがその後に開発されました。これを使うともっと速く走れますよということがわかりますが、今度は「かかとはいらないのではないか」ということで、あるアスリートがかかとの部分を完全に取り払ったものを1992年のバルセロナ・パラリンンピックで使用していました。これが現在使われているアスリート用義足の原型となったと言われています。また、1992年以降に関しては、それぞれのメーカーが様々な形に曲げて独自のブランド化を図っています。その代表的な例なんですが「チーター」と呼ばれるもので、複数の曲線を含む義足が開発されています。

インタビューで語る保原研究員

シーン2

(質問) 義足を使ったアスリートの記録の伸び

(保原) このグラフにご注目ください。これは1900年の五輪開催から、直近の2012年ロンドン五輪まで、それぞれの男子100m走の優勝タイムがどのようなものであったかということを回帰分析をかけた結果になっています。青がオリンピックの結果。赤がパラリンピックの結果です。パラリンピックで義足で100mのレースが初めて開催されたと言われているのが1976年の大会ですから、スタート地点は1976年になっています。オリンピックに関して言いますと、100m走の優勝タイムは直線的に減少していっているのがわかると思います。これに対してパラリンピックは最初の3大会の時はアスリート用の義足が開発されていませんでしたので、優勝タイムは13秒前後と遅いものでした。これが、カーボン繊維が登場してからは、優勝タイムがソウルパラリンピックで一気に1.5秒も速くなります。以降これが直線的にタイムが更新されて行って、この2つの直線の傾きが、ある1点で交差しているのがわかります。この年が2068年という計算結果が出ています。しかしながらこの2068年という結果が本当に起きるかどうかということは、これからの研究ですとかアスリートの頑張り、さらには人間とモノの同時最適化ですとか様々な問題を解くことで実現できるかもしれませんし、実現できないかもしれない。これは意見が分かれているところと思います。

こと走り幅跳びに関して言うと、最近話題になっているマルクス・レーム選手。彼の存在が非常に大きくて、この直線の傾きがもっと急で、2つの線の交点が 2016年の8月下旬という結果になっています。

スライドの図表を指し示す保原研究員

シーン3

(質問) 今後パラリンピックの見方が変わっていきますか?

(保原) 私個人の意見なんですけど、今まではオリンピックという非常にパフォーマンスの高い競技会があって、そしてその下に時期をずらしたパラリンピックというものがありました。しかしながら向こう10年、ひょっとしたら、その価値が逆転する可能性があると私は思っています。そうすると、人間の限界を楽しむスポーツの競技会とは何かといった場合に、真っ先に出てくる回答がパラリンピックというような、そんな時代が来ると面白いかなと思います。

質問に答える語る保原研究員
=敬称略