第2回 わとちみつさ

5月22日、リオデジャネイロ・パラリンピックの日本代表に内定した選手が発表された。2010年から日本代表男子のアシスタントコーチに就任し、13年6月にヘッドコーチに昇格したおいかわしんぺいは、その会見で「日本独自の強み」をこう表現した。車いすバスケットボールは、戦略や戦術で相手の強みを抑えたり、自分たちに足りないものを補ったりする。バスケットボールにはない、車いすバスケ独特の戦術もある。日本はどんな戦術を使い、連係しているのか。及川の解説とともに振り返ろう。

NO EXCUSE(紺)の攻撃に備え、車いす5台で壁を作るような守備の布陣を敷く宮城MAX(白)。相手選手をゴール近くにポジション(位置)取りさせない意図がある=5月の日本選手権より

まずポジション

車いすバスケの攻防の基本はポジション取りだ。守備は、ゴールの周りに車いす5台で壁を作る。なるべく遠くから無理な体勢でシュートを打たせれば守備の勝ち。前後半20分ずつ、計40分間で相手の得点率は下がる。逆に攻撃は、5人がかりでこの壁を崩しにかかる。日本の守備で、ゴール近くに相手に入られてしまった場面と、逆に相手を遠ざけられた場面がある。

車いすバスケのポシション取り

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バックピック

車いすバスケでは、ジャンプができず、車いすの幅がある分、相手が頭上に掲げたボールに触れられなくなる。だから攻撃側は、壁を作る守備選手の動きを妨害して壁に穴を作り、ゴール近くに、より高くシュート力のある選手を送り込もうとする。たとえ数秒間でも、守備をする相手選手が少なければ少ないほど攻撃は有利になる。そこで使うのが、「バックピック」。守備に戻ろうとする相手選手の進路を、車いすで妨害する。車いすバスケ独特の戦術だ。短時間でも相手守備選手が少なくなれば、ゴール下にスペースができるし、数的優位になる。その数秒の間に、シュートまでもっていく。攻守が切り替わる瞬間の、ボールのないところの攻防がカギになることが多い。

車いすバスケの戦術 バックピック

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相手のシュートが外れて、4番ふじもともちてん4.5がリバウンドを取った瞬間、ボールを持っていない5番とよしまあきら2.012番ふじさわきよし2.0が守備に戻ろうとする相手を妨害する「バックピック」を行う。さらにコート中央で10番ちょうかいれんし2.0がバックピックにいく。全選手が機能し、ポイントゲッターの4番ふじもともちてん4.5が難なく得点した。

車いすバスケのルール解説の動画

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障がいの重さも戦術に

日本としては、しょうがいの重いとよしまふじさわらが、相手のしょうがいの軽い選手の戻りを遅らせられれば理想的だ。そうすると、しょうがいが軽くて高さがある4番ふじもともちてん4.5には、しょうがいが重く高さがない相手しかマークできなくなる。しょうがいの重さと高さのミスマッチを利用して、ふじもとが得点する場面は増えることは、チーム戦術が機能していることを意味する。

日本の連係プレーの精度は高まっている。日本では別々のチームに所属して敵同士となるふじもとこうざいひろあきちわきちわきみつぐの主力3人が、世界トップクラスのドイツリーグではチームメートとして日本代表でも生きる戦術や連係を深めてきたからだ。他の選手とも、合宿を重ねて、体格に勝る海外の強豪国に勝つための緻密な連係プレーを磨いている。ごとう たいすけ

=敬称略