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種なし富有柿を実現、花粉にX線を照射 久留米

2009年11月4日14時0分

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写真どちらも松本早生富有。右が種なし、左が種あり=福岡県久留米市百年公園

 鮮やかなオレンジ色の秋の味覚、柿。でも種を取るのがちょっと面倒……。こんな悩みを解消する種なしの柿を人工的に作る新技術が、全国有数の柿産地である福岡県筑後地方のバイオベンチャー企業などによって共同開発され、地元の果樹農家が栽培に成功した。

 筑後川と耳納連山に挟まれた平地に広がる柿畑。10月21日、同県久留米市草野町吉木の柿農家、福田悟さん(66)が、直径10センチほどに太った甘柿「松本早生(わせ)富有(ふゆう)」を数個収穫した。立ち会った同市のバイオベンチャー企業「ケイワン」の中島国男社長(53)が実に包丁を水平に入れると、すっと切れた。種を包む厚さ1、2ミリの種皮のようなものはあるが、種がない。糖度は16度で通常の甘柿に劣らず、ほおばると実に甘かった。

 種のない甘柿では「次郎」が流通している。次郎は種があると裂果しやすいため、雄花のつく木を近くに植えないようにして栽培されるが、この方法だと、種なしの富有を作るには適さないという。

 このため、ケイワンと農研機構北海道農業研究センターの杉山慶太・上席研究員らが新技術を開発した。透過力の弱い軟X線を柿の花粉に照射し、種をつくる機能をなくして授粉する。軟X線処理した花粉を授粉することで、味や実の大きさなど品種の特長を維持できた。さらに、寿命が短い花粉を特殊な技術で冷凍保存することにも成功した。これで農家はいつでも人工授粉できるという。

 ただし、課題もある。ミツバチの授粉を防ぐため開花前に枝ごと袋で覆い、人工授粉した後に袋を外す。福田さん方は柿の木5本の袋がけに4人がかりで3日かかった。中島社長は「量産には省力化や大量の花粉も必要で、技術開発の余地がある」と話す。

 一方、市場の評判は上々だ。福田さんは10月中旬、同じ方法で育てた甘柿「太秋(たいしゅう)」の種なしを収穫。約20個を福岡・天神の百貨店「岩田屋」で1個2千円で販売したところ、種のある太秋の約3倍の高値だがほぼ完売できた。

 11月からは「甘柿の王様」と呼ばれる「富有」の種なしの収穫も始まった。同市と同県うきは市の農家7戸が、今季は計約1600個を収穫する予定だ。中島社長は「種なしの富有柿を地域のブランドにしたい」と意気込む。(矢島由利子)

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