東京都港区の大型複合施設「六本木ヒルズ」内の森タワーで26日、大阪府吹田市の溝川涼君(6)が自動回転ドアに挟まれ死亡した事故で、回転ドアの挟まり防止機能の赤外線センサーに、「死角」があることがわかった。センサーが感知する範囲に一定の条件があり、身長の低い涼君が感知されなかった可能性があるという。警視庁は、このセンサーの仕組みを調べている。
ドアを製造した「田島順三製作所」の親会社「三和シヤッター工業」の説明によると、扉の下の部分にあるセンサーは、ドアが閉まりきる側の柱から水平に20〜30センチの幅で、地面から約15センチの高さまでのものを感知する。天井付近にある上の部分のセンサーは、地面から80センチより上のものを感知する仕組みになっていた。
警視庁がこの回転ドアを調べたところ、上部のセンサーが感知する範囲は地上から80センチよりさらに高い位置だったといい、身長117センチの涼君が死角に入り込んだ可能性があるとみて調べている。
また、昨年12月にこの事故と酷似した事故が起きた際、同タワーを管理する森ビルが、三和シヤッターとの間で安全対策について相談。5つの案が挙がっていた。
森ビルによると、問題の事故は昨年12月7日起きた。午前11時前、女児(6)が一緒に遊びに来た友人を追いかけて、閉まりかけている回転ドア内に走り込み、体を挟まれた。女児は救急車で病院に搬送され、耳や足に軽いけがをした。
事故の2日後、森ビルと三和シヤッター工業で話し合った結果、回転ドアの入り口に駆け込み防止用のバリケードを施す▽利用者に注意を促すシールを張り付ける▽人や物がはさまれた時にドアが逆回転する機能を付ける▽ドアの一部にぶつかると停止するタッチセンサーの追加設置、などが検討されたという。
森ビルは駆け込み防止用として、ドアが閉まりかける付近に、2本のポールに赤いベルトを渡した安全さくを設けた。さらに「親が子供の手を引いてください」との内容のステッカーをドアに張って注意を促した。またタッチセンサーも追加設置した。
しかし逆回転機能については、技術的な課題があるとしてまだ実現していないという。
今回の事故で、涼君は安全さくの傍らをすり抜け、ドア内に入ろうとして被害にあった。
森タワーでは、昨年11月25日夜にも、回転ドアの中に一人で入り込んだ女児(2)が足を挟まれてけがをした。ほかにも、けがをした例が数件あったという。
三和シヤッター工業によると、今回の事故を起こしたのは、大型の自動回転ドアとスライド式のドアを一体化したタイプ。天候などの条件に応じて、回転式とスライド式のいずれかを選択できる。事故当時は回転式になっていた。
自動回転ドアには、建築基準法などによる公的な安全基準はなく、安全対策はメーカーに委ねられている。
(03/27 15:39)
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