昨年4月のオープン以来、六本木ヒルズ内にある自動回転ドアでは計32件の事故が起きていた。ほぼ10日に1回の割合だ。森ビルが所有する別のビルでは、溝川涼君が死亡した今回の事故の6日前にも、男児が首をはさまれる事故があった。森ビル側は「大きな事故という認識をしていなかった」というが、専門家らは未然に防ぐ手だてが不十分だったのではないかと指摘している。
森ビルによると、最初の事故はオープン翌日。男性が大型自動回転ドアにぶつかり、顔などに軽いけがをした。昨年6月には、今回同様、男児が首を挟まれた。12月には、大型自動回転ドアに挟まれる事故がほぼ1週間おきに3件相次いだ。
また、同じ森ビルが所有する東京都港区の別のビルでは今月20日、今回の事故と同種の大型回転ドアの中に入った男児が戻ろうとして首を挟まれる事故も起きたばかりだった。男児は首などに擦り傷を負い、救急車で病院に運ばれた。
森ビル側は27日の会見で、自動回転ドアの事故防止センサーに死角があることを昨年12月の事故後に知り、メーカーと対策を検討していたと説明した。森ビル側は天井からのセンサーの届く範囲を伸ばすなどして死角を狭めるよう要望したが、メーカー側は「誤作動が増える」などの理由で変更はしなかったという。
安全工学が専門の清水久二・横浜国立大名誉教授は「自動回転ドアなど大型装置は、万一の場合でも死に至らないような二重三重の安全対策が欠かせない。センサーに死角が存在するなんて話にならない」と指摘する。リスク管理の発想が浸透した欧米では、製造者だけでなく発注者側も安全性をきちんと考慮して仕様を決めているといい、「人の出入りの多い建物だからこそ、発注したビル会社の責任も問われてしかるべきだ」と話す。
「PL(製造物責任)法・情報公開法を活(い)かす関西連絡会」事務局長の関根幹雄弁護士は「過去に事故があったのなら、その危険性を説明した上で大きく表示すべきだ。1件の不注意な事故というわけではないのだから、メーカーによる回収などにつながる話だ。危険回避のための対策が不十分だったのではないか」と話している。
(03/28 10:04)
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