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2012年12月6日03時00分
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めくるめく奇才の傑作結集 エル・グレコ展見るヒントは

 16〜17世紀のスペイン美術の黄金時代に活躍した巨匠エル・グレコ。彼の油彩の傑作ばかりを集めた国内で最大の回顧展が大阪・中之島の国立国際美術館で開かれている。展覧会の監修を務める雪山行二(こうじ)富山県立近代美術館館長に、エル・グレコ展を見るヒントを寄稿してもらった。

     ◇

 異様に長く引き延ばされた身体、蛍光を発する鮮やかで超自然な色彩、見る人を天に向かって巻き込んでいくかのようなめくるめく世界。エル・グレコの作品は一度見たら忘れられない強いインパクトを持つ。一見奇矯ともいえるこの画家の芸術を理解するため、手掛かりとなる事実を三つ示しておきたい。

 エル・グレコはベラスケス、ゴヤとならんでスペイン絵画の三大巨匠の一人に数えられているが、実はギリシャのクレタ島に生まれた異邦人であったこと。本名はドメニコス・テオトコプーロス。エル・グレコは「ギリシャ人」を意味するあだ名である。トレドを第二の故郷としてこよなく愛したにもかかわらず、人々は彼をギリシャ人と呼んでいた。彼自身、作品には常にギリシャ文字で署名していたのである。彼の芸術はスペインという枠をはるかに超える国際性を持っていた。

 第二は、スペインを盟主とする対抗宗教改革のさなかにあって、そのイデオロギーに忠実な画家であったこと。彼はマグダラのマリアやペテロなど、悔悛(かいしゅん)する聖人の姿を好んで描いたが、「悔悛」こそはプロテスタンティズムとの相違を示すカトリック側の重要なスローガンであった。プロテスタントとカトリックが激突した時代において、グレコの描く鮮烈な宗教画はスペインで熱狂的に迎え入れられたのだった。

 第三は、彼がトレド一の流行画家として、ビジネスの世界でも成功を収めていたこと。没後長らく忘れ去られていたエル・グレコは、19世紀末から20世紀初頭に孤高の神秘主義画家として劇的な復活を果たした。しかし今では、当時のトレドの上流社会や宗教界と広く親交を保ち、殺到する注文をこなすため工房を経営、優雅な生活を送っていたことが判明している。

 熱狂的な需要に、ビジネス手腕も発揮して見事に応えたグレコ。その結果、古都トレドを中心にスペインの多くの教会がグレコの芸術で彩られたのである。

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