|
市民が「脱原発」をめぐる国の政策決定プロセスへの監視を強めている。中心になっているのは、脱原発を求めて街頭で声を上げている人たち。国民の声に耳を傾ける目的で政府が設けたパブリックコメント(パブコメ)などの手続きが「ガス抜き」に使われかねない、との懸念からだ。
「原発を即時停止するという選択肢がそもそもないのが不満だ。議論にかける時間も短すぎる」。東京・渋谷で先月24日にあった「自主的意見交換会」。内閣官房国家戦略室の担当者に、参加者が声を上げた。
政府は2030年の原発比率について「0%」「15%」「20〜25%」の三つの選択肢を提示。パブコメの募集と全国11カ所での意見聴取会などを「国民的議論の礎」と位置づけ、それぞれ7月から進めている。交換会の約60人の参加者は、決定過程の不透明さや説明の不十分さを次々とただした。
会を企画したのは、国際環境NGO「FoE Japan」などの市民団体。2030年の原発比率を定める新しいエネルギー政策の決定を控え、選択肢の設け方や決定への道筋について説明を聞こうと、担当者を招いた。
FoEの原発・エネルギー問題担当、吉田明子さん(31)は「通り一遍の手続きを変えたい。参加者にも、政治に不満を抱くだけでなく、決定プロセスに関与することが大事だと知らせたい」と言う。
毎週金曜夜に首相官邸前で抗議行動を続けてきたネットワーク「首都圏反原発連合」とも連携し、「原発ゼロ・パブコメの会」を発足。会のサイトで国の選択肢やパブコメの送り方を解説し、先月29日の抗議行動「国会大包囲」でも送付を呼びかけた。
こうした動きの背景にあるのは、従来の政策決定で多用されてきた意見聴取会やパブコメが、政府の「アリバイ作り」にすぎなかったのではないか、との見方だ。「パブコメの会」メンバーで、NPO法人「環境エネルギー政策研究所」顧問の竹村英明さん(60)は「政策決定の過程に注目が集まれば、政府は市民の声を無視できない」とみる。
意見聴取会はすべて終了し、パブコメの締め切りは12日に迫る。寄せられたパブコメは6日時点で約3万8千件。10カ所の聴取会で「0%」を選んだ人は約7割だった。国家戦略室の担当者は「(パブコメや意見聴取会は)決してガス抜きではなく、決定に反映する前提で実施している」と説明する。(澄川卓也、多田晃子)