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今回の拡散予測は、道府県が原子力防災の重点区域を設定する際に、参考資料として役立てるためのものだ。これまでは原発を中心に円状に線引きして設定していたが、実際の事故では、放射性物質の広がり方は天候などに左右され、円にはならないからだ。
予測では、放射性物質の放出量として、東京電力福島第一原発事故での放出量をもとに各原発ごとの出力に応じて増減させた値を使った。気象情報は過去に各原発で観測した年間データを用いた。
16方位ごとに、国際原子力機関の避難基準となる1週間あたりの被曝(ひばく)量が100ミリシーベルトとなる距離を求めた。事故を受けた福島県での計画的避難区域の設定基準は、国際放射線防護委員会が緊急時の暫定的な被曝線量の低減目標とする「年間積算線量が20ミリシーベルト」。これと比べて「1週間で100ミリシーベルト」は相当高い値だ。
規制委は福島第一原発についても、事故前の状態を仮定して予測した。1週間で100ミリの避難基準に達する最大の距離は18.7キロだった。事故後に実測した積算線量の推計でも、最大の距離は20キロ以内に収まっていたため、規制委は「今回の試算方法はおおむね妥当」とした。
拡散予測は通年の傾向を表しており、必ずしも個別の事故と比較できないが、福島第一原発について、事故の約1カ月後に福島県で実測された空間放射線量の地図と比べると、陸側に拡散した地域の形状は結果として予測と似ていた。
ただ、予測は地形データを用いておらず、飛散する方向も放出開始時点の風向きが1週間続くと仮定。方角によっては風が吹く頻度が少ないため、避難基準値に達する地点を十分な精度で示せず、予測値の信頼性には限界がある。
規制委は今後、地形データなども考慮に入れた詳細な予測も検討する。田中委員長は、大事故に備えてどの範囲まで準備すべきかの参考情報とし、「あくまでもシミュレーション。やたらと不安には思わないでほしい」と話す。