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「オテロ」の司令塔は指揮のチョン・ミョンフンだ。第1幕の冒頭、嵐の場面を躍動感あふれるオーケストラと合唱で表現し、観客を即座にドラマに引き込んでしまった。
どの場面も、言葉を深く彫り込むようにオーケストラを鳴らす。韓国生まれ、米国育ちのマエストロだが、「イタリア人よりイタリアオペラを知っている」とフェニーチェ歌劇場のスタッフを驚嘆させた。その情熱の源泉は、ベルディとイタリアへの深い愛だ。
「偉大な音楽は、人間とは何かを表現する力を持っていますが、中でもベルディのオペラとベートーベンの交響曲は、私にとって特別です。ベルディの音楽は人間の強さ、エネルギー、信頼といった前向きに生きる力を与えてくれるのです」