米上院のレビン軍事委員長(民主)とマケイン筆頭委員(共和)、ウェッブ外交委員会東アジア太平洋小委員長(民主)は11日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を断念し、米軍嘉手納基地への統合を検討するよう米国防総省に求める声明を発表した。
国防予算編成権限を握る軍事委は、国防政策や軍に大きな影響力を持つ。重鎮のレビン氏らによる声明で現行案の履行は一層困難になり、日米両政府の判断に大きな影響を与えそうだ。
日米は2014年までに普天間移設を完了し、沖縄駐留の海兵隊員8千人と家族をグアムに移転することで合意している。レビン氏は「計画期間は全く非現実的」と指摘。「沖縄やグアムの政治情勢、震災による日本の巨額な財政負担も考慮すべきだ」とし、計画の見直しを主張した。
その上で、レビン氏らは提言として、巨額の代替施設を作るのではなく、嘉手納基地の装備や施設の一部をグアムのアンダーセン空軍基地や日本国内で分散させることで、普天間飛行場を嘉手納基地に統合できないか、実現可能性を探るよう求めた。
レビン氏らは、グアムの海兵隊についても負担軽減案を示して計画の見直しを要求。提言の実行で「米国の納税者の負担を何十億ドルも減らし、米軍の地域での展開を維持し、普天間移設をめぐる政治的に敏感な問題を減らし、沖縄における米軍の存在感を軽減できる」とした。
レビン、ウェッブ両氏は先月下旬、東京、沖縄、グアムなどを訪問した。11日に米議会内で会見したウェッブ氏によると、提言についてゲーツ米国防長官と事前に話し合ったという。
米国防総省のラパン副報道官は朝日新聞に対し、現行案が「沖縄の人々や日本全体、日米同盟にとっても好ましい」として、米政府の立場に変化がないことを確認。日米両政府は6月下旬に外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)をワシントンで開き、辺野古に作る代替施設の滑走路の形式などを決める予定だ。ただ、米政府内でも代替施設の建設は困難との見方が出ており、見直し論議が勢いを増す可能性がある。
一方、嘉手納統合案はこれまでも模索されたが、米側が、空軍の航空機と海兵隊のヘリコプターを同時に運用するのは困難などとして拒否。地元自治体も、騒音被害などの負担や事故の危険が増えるとして反対している。(ワシントン=伊藤宏)