「街の変化を客観的に伝えたい」と話す西樹さん=鈴木好之撮影
ネット上で運営する街の話題のニュースサイト「シブヤ経済新聞」の編集長、西樹(たてき)さん(49)が、「新聞」を名乗った理由は小学生時代にさかのぼる。
「子どもの頃から新聞が大好きで。親に無理言って、小学生新聞をとってもらっていた」
「経済新聞」では、記事の表現の仕方を統一している。何より客観的な事実を伝える。
「例えばお店の紹介だと、『おいしい』『おすすめ』となりがちだが、それは主観。店ができたという客観的な事実を伝え、街の変化の生データを蓄積していく。紙の新聞の記事の書き方を、まねしているんですね」
ブログやツイッターで誰でも主観で好きなことが書けるからこそ、「生データ」に徹する。一方で、「批評や価値判断は交えない。そこがジャーナリズムとは違う」。
自分の街でも面白いことがたくさん起きているが、なかなか外に伝えられてない――。そんな思いの人たちが集まり、創刊4年後に「ヨコハマ」、翌年は「六本木」「天神」と、同じスタイルの「経済新聞」が広がり続けた。10周年の今は海外を含む55サイトが連携し、「みんなの経済新聞ネットワーク(みん経)」を展開。月間の閲覧ページ数は合わせて600万に上るメディアだ。
最初はみんな、取材・執筆経験のない人ばかり。街に対する好奇心や愛着があるかどうか。それが「経済新聞」を続けていく、一つの試金石だと考えている。
情報の集め方、話題の取り上げ方、記事の書き方。それぞれの経験や知恵を「みん経」のメーリングリストで共有し、学習していく。「ネットワーク内の知恵の集積。その中で、私は困ったことの相談に乗るヘルプデスクのようなもの」と西さん。
ヤフートピックスなどへの記事の外部配信も始めており、事実関係の間違い、誤字脱字があったりすると、様々な迷惑をかけることにつながる。「ネットだから直せばいい、ではダメだとこだわっている」
サイトでの記事の配信に加えて、今ではツイッターにも発信。さらに多機能携帯「アイフォーン」にも対応している。ただ「みん経」の活動としては、「ITより、アナログな方が多い」。
街を歩いて、店をみつけて、話を聴く。その結果の最終的な記事配信の段階で、ITとかウェブが少しあるだけ。「技術の流行にはあまり左右されずに、こつこつと続けていきたい」と西さんは言う。(編集委員・平 和博)