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〈メディア激変29〉初音ミクと―1 お母さんがつくる歌

2010年5月14日22時51分

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写真はややさんがパソコンで作曲するのをまねる娘のこはくちゃん=愛知県豊田市

 「かーきくー、けーこー♪」。4歳の娘こはくちゃんが、パソコンから流れる歌に合わせて口ずさむ。

 歌声合成ソフト「初音ミク」を使って、お母さんが作っている途中の歌だ。このソフトは、歌詞とメロディーを入力すれば、人間の声を基に歌声を合成し、その通りに歌ってくれる。歌詞は、「かきくけこ」を適当に当てている。

 「作ってるうちに覚えちゃったんです」。愛知県豊田市に住む30代後半の専業主婦は、ネットでは「はやや」の名で知られる。動画配信サイト「ニコニコ動画」で、投稿した自作曲が注目を集める「人気作家」だ。

 最も注目を集めた「夢みることり」という曲は、投稿から2年で70万回近く再生され、インディーズレーベルでCD化。テレビゲームや通信カラオケにも、自作曲が採用されている。

 結婚前の本名・神谷順の名で漫画家デビュー後、ゲーム会社に転身。漫画家復帰の誘いもあったが、出産、育児を選んだ。

 07年8月、初音ミクが発売される。購入した人たちが、自作曲を「歌わせ」、それを自作の画像などと一緒にニコニコ動画に投稿し始めた。テレビで流れているような完成度の高いものもあり、その内容は驚くほど多彩だった。

 育児に手いっぱいで、眠っていた創作意欲に、火がついた。すぐにソフトを購入。キッチンにノートパソコンを持ち込み、娘が遊びに熱中しているときやお昼寝の時間などに、1小節2小節と書きためた。

 その年の11月、こうしてできた最初の曲「みくみく菌にご注意♪」は、投稿すると再生数は日に万単位で伸びていった。

 ニコニコ動画は、視聴者が動画を見ながら入力したコメントが、即座に画面上に流れて表示される。投稿後には、「この歌、感染力抜群」といったコメントで画面が埋まった。それが楽しくて、また新しい歌を作りたくなった。

 曲作りは自己流。伴奏のギターやドラムの演奏も、別の専用ソフトで作る。わからない点はネットで調べながら手探りで学んだ。「そんなレベルでも、気楽に始められるんですよ」

 ただ、娘はますます手がかかる。来春の幼稚園入園までは、発表はお預けになりそうだ。「でも、自分のペースで作って、いつでも発表できるのは夢のよう」。いつか、娘と一緒に歌える曲をつくりたいと思っている。

 パソコン1台で作品を作り、自宅からネットへと発信する。そんな、利用者が作るメディア。初音ミクは、一般の利用者に「自作曲」の世界を広げていった。(丹治吉順)

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