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〈メディア激変46〉伝える、海の向こうで―1 チリの惨状を世界に伝えた18歳

2010年6月4日18時19分

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写真チリ中部で3月初め、被災者の支援にあたるパブロ・ゴンサレス・カルセイさん=本人提供

 2月27日未明、チリの首都サンティアゴ。大学生パブロ・ゴンサレス・カルセイさん(18)は、両親や妹と住むアパートのベッドにいた。ひとり夜ふかしし、愛用のiPhone(アイフォーン)を片手に、ツイッターで友人とたわいのない会話を楽しんでいた。その時。体感したことのない激しい揺れに体が浮いた。マグニチュード8.8の大地震がチリを襲ったのだ。

 靴を履く余裕はなくても、iPhoneは手放さなかった。「揺れてる、強い」。ツイッターに書き込んだ。外に出ると、建物の破片だらけだった。駐車場が崩れて車が下敷きになり、ほこりだらけの人々が通りに座り込んでいた。

 「とにかく記録しなきゃ」。携帯電話の通信網は生きていた。ユーストリームはあまり使ったことがなかったが、iPhoneのソフトを立ち上げて目の前の光景を撮影し、そのまま生中継。写真も撮ってツイッターに載せた。

 大きな爆発音がして、電柱が崩れ落ちた。おびえる妹たちを抱きしめながら、「市当局の皆さん、激しい爆発です」と、ツイッターで助けを求めた。通りで夜を明かした。余震が続き、不安だったが、警備員小屋で見つけた電源でiPhoneを充電し、自らを励ますように書き続けた。足元はずっと靴下のままだった。

 「チリ地震の書き込みや中継は、僕が最初の方だったみたい」とゴンサレスさん。励ましの書き込みが世界中からきた。中継を見る人も翌日には数千人になり、米CNNや英BBCから取材も受けた。ツイッター好きの大学生が、瞬く間に有名人に。「ほんと、びっくりだよ」

 チリ地震では、惨状を伝え支援を求める被災者らがツイッターやユーストリームを活用。現場の映像が最初に流れたのはユーストリームからとされ、一日で史上最多の約600万人が視聴した。チリは南米諸国の中でも携帯電話の普及率が高い。地震で電話回線は寸断されたが、無事だった携帯電話の基地局を介して市民の書き込みや中継が飛び交い、世界中が見守った。

 発生から数日後。ゴンサレスさんは赤十字のボランティアに加わり、首都から南へ約400キロ、震源に近い中部の沿岸地域に向かった。

 辺りを撮影していると、70歳だという男性が悲しげな様子でやって来た。イスラエルにいる家族と連絡がとれない、という。「そしたら偶然、僕のツイッターにイスラエルから書き込みがあったんだ。父を捜してる、ってね」。確認したら、まさにその家族だった。男性の無事な様子を、中継した。喜んで抱きついてきた男性の腕の中で、ゴンサレスさんは、市民メディアの力を実感した。(藤えりか)

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