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〈メディア激変51〉伝える、海の向こうで―6 中国、「ネットの匿名性」に矛先

2010年6月11日17時33分

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写真「食事時間以外はずっとネットをやっている」と話す張洪峰さん=中国湖南省湘潭市、古谷写す

 長江中流域に当たる中国湖南省の湘潭市。地元政府の環境保護部門で幹部職を務める張洪峰さん(33)は、蒸し暑さに覆われた職場で、パソコンをいじりながら、インタビューに応じてくれた。

 張さんは、中国のネット上でちょっとした有名人だ。

 昨春、浙江省杭州市の新たなネット管理法規が、ネットの書き込みに身分証明書番号による実名登録を義務づけたとも読み取れる内容だったことが、議論となっていた時のことだ。張さんは警察に「自首」した。偽名で杭州市のネットに登録して書き込みをしたと手紙を書き、罪に当たるのかを警察に問いただしたのだ。

 「中国では違法な書き込みをしたら実名でも偽名でも警察に捕まる。実名制にする必要がない。ネットというのは、開放された空間であるべきだ」と張さんは話す。

 警察は「違法行為ではない」と書面で返答。実名登録は実施されず、張さんは警察との一連のやりとりをネットで公開し、支持を集めた。

 しかし、中国政府は今年に入り、実名制度導入の検討を公に明らかにし始めた。5月初め、ネット新聞を管理する国務院(政府)新聞弁公室の王晨主任(閣僚級)は、中国の国会に当たる全国人民代表大会の専門会議で「ネット実名制度の推進を前向きに模索する」と明言した。

 王主任の発言をもう少し引用してみる。中国政府が「ネットの自由」をめぐって頭を悩ましている論点が分かる。

 「我が国のネットを国際的に開放しようとすれば、海外の有害な情報が国内のネット上に出現する。国内で開放しようとすれば、いろんな言論がネット上に出る。我が国は今、社会の転換期であり、その矛盾や問題がネット上に出てくることが避けられない」

 ネットの世界を開放していけば、中国社会の矛盾があらわになる、だから規制をする、との論理だ。中国のネット人口は約4億人。書き込みが、共産党一党支配による「社会の安定」を揺るがすことを、当局は許さない。

 中国のネット上では、台湾や香港のニュースの多くを見ることができないし、日本政府の尖閣諸島に関するサイトも開けない。「抜け道」を探す人たちとのいたちごっこは続くが、管理は強まるばかりだ。さらには匿名性というネットの特性さえ、消えゆく可能性がある。

 中国政府の発表によると、昨年、ネットに「有害な情報」を流したとして拘束された人は5千人以上。閉鎖された「有害サイト」は14万以上に上っている。(北京=古谷浩一)

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