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〈メディア激変52〉伝える、海の向こうで―7 人権活動家、防護壁かいくぐる

2010年6月18日17時45分

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写真馮さんは4月、警察に自宅のパソコン4台を没収されたが、「携帯が1台あれば十分書き込みが出来る」と話す=上海、奥寺写す

 「5月9日、警察が来た」「上海市幹部が話があると言うので、ついていったら、うそだった」「強制的に旅行に連れていかれた」

 上海在住の人権活動家、馮正虎(フォン・チョンフー)さん(55)が先月、ツイッターを通じてこう発信した。上海万博期間中、別の活動家と接触するのを恐れた警察が、「旅行」と称して馮さんを事実上、拘束したいきさつを暴露する内容だった。

 1989年の天安門事件の際、民主化運動制圧に反対して職を追われた。当局に昨年6月から帰国を8回拒否され、成田空港で3カ月寝泊まりして抗議したことでも知られる。その馮さんが先月突然、音信不通になり、4日後に解放された。「上海郊外のリゾート地で警官と衣食住をともにし、散歩や釣りをして過ごした」。自由を奪われた様子を、ツイッターに記した。

 中国では通常、ツイッターは使えない。「グレート・ファイアウオール(万里の防護壁)」と呼ばれる巨大な政府の検閲システムがあり、自由に意見が飛び交うサイトの多くは接続が禁止されている。なのに馮さんを始め、多くの人権活動家らはこの規制をかいくぐっている。今、国内外の約2万3千人が馮さんを常時フォローし、当局による人権侵害を監視している。

 上海在住の自営業者(38)もその一人だ。馮さんが日本から帰国した2月、支援者ら約70人と上海浦東空港にいた。「飛行機が到着すると、すぐ当局者に連行された」。馮さんと同行した人の発した「つぶやき」が、到着ゲートにいた自営業者らの携帯電話に瞬時に届いた。

 自営業者は、携帯電話に「VPN」(仮想専用網)と呼ばれるソフトを入れている。簡単にダウンロードでき、料金は年間わずか10ドル(約920円)。情報を暗号化し、通信データの検閲や改ざんを防ぐことが出来る。自宅のパソコンには、通信を迂回(うかい)させて検閲を回避するソフト「フリーゲート」を使っている。

 別の手もある。ツイッターの発信を日本や米国のサイトに転送し、閲覧する方法だ。「第三者ページ閲覧」と呼ばれ、「把握しているだけでも、数百のページがある」。試しに記者も、上海市内から、日本のサイトに転送されたページにアクセスしてみた。正規のツイッターと同じ内容が、瞬時に更新されていた。

 なぜ当局は放置しているのか。自営業者はいう。「そこまでして閲覧する中国人は少ないので、まだ影響は小さい。何より、彼らも情報収集に利用している」(上海=奥寺淳)

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